【3月27日 東方新報】中国の銀行が新婚カップル向けに結婚に関する費用のローンプランを発表したところ、「花嫁を金で買うローンだ」とインターネットで炎上し、銀行がローンを中止する騒ぎとなった。伝統的に中国人は「借金嫌い」で、ローン文化が浸透していないことも反発の背景にあるようだ。

 騒動となったのは、江西省(Jiangxi)を拠点に中小企業や個人向け融資を行っている九江銀行(Bank of Jiujiang)が発表した「彩礼ローン」。彩礼は直訳すると「結納」「結婚資金」にあたる。新婚旅行、自動車、宝飾品、家電製品の購入費用が対象で最高30万元(約501万円)を貸し出し、年利4.9%で返済は1年間とした。

 中国では結婚する前にマイホームを購入するのが一般的。最近は男性が自動車を持っていることも結婚の必須アイテムとなっている。「マイホーム、自動車、結納金」は三大件(三種の神器)といわれ、男性側が結婚する際に用意する費用は増える傾向にある。九江銀行のローンはそこに目を付けたものだが、ネット上では「『結婚には費用をかけるもの』という見栄(みえ)の文化を助長する」「結婚で金もうけをするな」とバッシングが起きた。九江銀行は「結婚資金ローンを計画していると広報はしたが、実際には行っていない」と表明し、実質中止に追い込まれた。

 今月に入ると、雲南省(Yunnan)の銀行が「墓地ローン」を発表した。墓地、墓石に関する費用のため最高20万元(約334万円)を貸し出し、10年以内に返済するプランだが、同じように批判を受けて中止に追い込まれた。銀行側は「交通事故など不慮のトラブルで死亡し、墓地を購入する費用もない事態を想定したものだが、誤解を招いた」と表明した。

 中国メディアはこれらの騒動に触れ、「これまでも奇妙なローンはあった」と報じている。「一人っ子政策」を撤廃し2人目の出産が認められた2016年、2人目の子どもを産んだ家庭に最高20万元を貸し出すという「第2子ローン」や、銀行が指定したウエディング会社で2万元(約33万円)以上を使った新婚夫婦に無利子でローンを組む「ウエディングローン」などを挙げている。

 だが、日本でこうした報道を見ると違和感も受ける。日本では結婚費用に関するブライダルローンは都市銀行が普通に行っているし、インターネットではブライダルローンの比較サイトもある。出産に合わせたローンも墓のローンも珍しくない。

 一方、中国は借金をしない「即金文化」が今も根強い。都市の一部では日本より不動産価格が高騰しているためマイホームのローンは当たり前となったが、自動車のローン購入すら少なく、ましてや家電製品を分割払いするような習慣はほとんどない。このため、結婚や墓地など冠婚葬祭に関わることでローンのプランを組むこと自体が「不謹慎」と移るようだ。

 日本でもバブル景気に伴いローン文化が広まった1980年代、「安易なローンは借金漬けになる」という反発が根強かった。今回のローン騒動は、急激な経済成長を続ける中国社会の一面を反映していると言えそうだ。(c)東方新報/AFPBB News