【3月27日 東方新報】中国で14日夜から16日朝にかけて、ここ10年で最も大規模な砂嵐が発生した。北西部の新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)から東北部の黒竜江省(Heilongjiang)まで12の省・自治区・直轄市に影響が及んだ。北京市内のビル群は茶色い大気に包まれて「終末」のような光景に。空の便は欠航、学校は屋外活動を中止した。中国では1970年代から、砂嵐の多い地域に防護林を植える「緑の長城」プロジェクトを進めているが、一部の中国メディアは「防護林プロジェクトは砂嵐に効果がないのか?」と疑問を投げかけている。

【動画】中国 過去10年で最大規模の黄砂がやってきた!12の省・市に影響

 中国では2000年から2020年にかけて大規模な砂嵐が32回発生し、時期は3月(11回)と4月(14回)に集中している。天気アナリストの石妍(Shi Yan)氏は「春になるとゴビ砂漠(Gobi Desert)やタクラマカン砂漠(Taklamakan Desert)などに積もった雪が溶ける一方、降水量が少なく低気圧の風が次々と発生するため、黄砂が広範囲に吹き飛ばされる」と説明する。

 中国では長年、国土の砂漠化に頭を抱えている。地球温暖化の要因もあれば、過剰な伐採や開墾、放牧などの影響もあり、流砂が大地をのみ込んできた。砂漠地帯の面積は国土の4分の1を超え、風に乗って東へ流れる黄砂が北京などの都市に舞い降り、海を越えて日本にも影響を及ぼしている。

 中国政府は環境破壊を抑えるため1978年から西北、華北(かほく)、東北地方の「三北」に植林をする「三北防護林プロジェクト」を進めている。2050年まで続く壮大な計画は「緑の長城プロジェクト」と呼ばれる。13の省・自治区・直轄市にまたがり、対象エリアは日本の総面積(378万平方キロ)より広い約406万平方キロに及ぶ。全8期の工程で現在は6期目に入り、対象エリアの森林被覆率は5.1%から13.6%に向上した。

 今回の砂嵐発生について、三北防護林プロジェクト評価技術チーム責任者の朱教君(Zhu Jiaojun)氏は「防護林は地表や土壌を改善する効果はあるが、さまざまな気象条件で発生する砂嵐を抑える効果は限定的だ」と率直に認める。

 ただ、三北防護林プロジェクトを含む数々の環境保護施策により、黄砂の舞う頻度が少なくなっているのも事実だ。国家林業草原局の統計によると、中国北部の3月〜5月における砂ぼこりの年間平均発生回数は1980年代の22.1回、1990年代の16.1回に対し、2000〜2020年は10.7回に減少している。

 今回の砂嵐はモンゴル南部の異常気象や強風が絡み合い発生した。中国林業科学研究院の楊文斌(Yang Wenbin)防砂担当主任専門員は「自然現象である砂嵐を根本的に押さえ込むことはできない。私たちにできることは時間をかけて緑を回復し、砂嵐の回数や規模を減らすことだ」と説明している。(c)東方新報/AFPBB News