【3月24日 AFP】早くも2021年を表すキーワードになりつつある「NFT」。ブロックチェーン技術を用い、デジタル作品を唯一無二の所有可能な資産としてオンライン販売する新手法であるNFTをいち早く活用する動きが音楽界に生まれている。

 多くの人にはいまだ理解されていない概念ではあるが、NFT(「非代替性トークン」を意味するnon-fungible tokenの略で、発音は「ニフティー」)とは基本的に、ビットコイン(Bitcoin)などの暗号資産(仮想通貨)の仕組みを支えるオンラインデータベースのブロックチェーンに所有権を記録し、それによってデジタルアート作品の「所有」を証明するものだ。

 NFTはアート界をたちまち席巻。今月11日には、競売にかけられていた米国人アーティストのビープル(Beeple)によるデジタルコラージュのNFT作品が6930万ドル(約75億円)で落札された。存命するアーティストの作品の落札額としては、史上3番目の高値だと報じられている。

 あらゆる種類のデジタルアートを収益化できるチャンスだと捉える人は多く、たとえその作品の複製が無限に可能だとしても、NFTの所有者は最終的な所有権は自分にあると主張できる。投資家にとっては、デジタルアートのNFTが新たな取引商品となっている。

 音楽業界ではこの20年、作品のデジタル化によって売り上げが大幅に低下していたが、NFTは貴重な収入源として期待されている。

 米誌ローリング・ストーン(Rolling Stone)によると、米ロックバンド「キングス・オブ・レオン(Kings of Leon)」は今月初め、ニューアルバム「When you see yourself」のNFT版をオンラインマーケットにオークション形式で出品。200万ドル(約2億1700万円)以上の売り上げを達成し、その4分の1をライブイベントに携わるスタッフを支援する基金に寄付した。

 キングス・オブ・レオンが発行したNFTは、レアアイテムを所有できるという抽象的な概念だけではなく、メンバーが撮影した写真や限定版のレコード、生涯ずっと彼らのライブを最前列で楽しめる「ゴールデン・チケット」など、具体的な特典付きだった。