【3月23日 AFP】原始の地球に十分な量のリンをもたらし、生命の誕生を後押ししたのは雷だったのかもしれない──。このほど発表された研究論文で、生命の誕生に対する従来説とは異なる説明が示された。

 リンは、細胞構造やDNAとRNAの二重らせん構造などを形作る、生命にとって極めて重要な構成要素だ。

 数十億年前の原始地球では、リンの大半は不溶性の鉱物中に閉じ込められていた。だが、鉱物の一種「シュライバーサイト」は反応性が高く、有機分子を形成可能なリンを生成する。

 地球にあるシュライバーサイトの大半は隕石(いんせき)に由来しているため、地球上での生命誕生は地球外の岩石の飛来に関係していると長年考えられてきた。

 しかし、ある一部の粘土質土壌への落雷によって形成されるガラス状の物質にも、シュライバーサイトは含まれる。

 米国と英国の研究者らは今回、最先端の画像技術を用いて、落雷1回でリンの供給源となるシュライバーサイトがどれだけ形成されるのかを調べ、また約35億年前の生命誕生に至るまでに、どのくらいの量のリンが生成されたのかを推算した。

 16日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された論文の筆頭執筆者で、米エール大学(Yale University)地球惑星科学学部のベンジャミン・ヘス(Benjamin Hess)氏と研究チームは、落雷によって生成されたリンの量は年間0.11~11トンに上った可能性があるとの考えに至った。

 原始地球の気候をシミュレートした結果、45億年前に月が形成されて以降は隕石の衝突が減少し、その後の10億年で、落雷によるリンの生成量が隕石を上回ったと研究チームは説明している。

 これは、生命誕生の時期と一致する。

 今回の研究についてヘス氏は、生命をもたらすリンのもう一つの供給源として隕石を完全に否定してはいないと話す。ただ、「生命発生の時期の前後に起きた隕石衝突は、10年前に考えられていたよりはるかに少ない」ことを指摘した。(c)AFP/Patrick GALEY