【3月12日 AFP】米国人アーティストのビープル(Beeple)が制作したデジタルコラージュ作品が競売にかけられ、11日、6930万ドル(約75億円)で落札された。競売大手クリスティーズ(Christie's)が発表した。デジタルアートが、高い利益を生む新たな創作分野として急速に確立しつつあることが示された。

 落札されたのは、「Everydays: The First 5,000 Days(毎日 最初の5000日間)」と題された作品。落札額は、非代替性トークン(NFT)作品の競売で史上最高額となった。NFTとは、ブロックチェーン技術を用い、デジタル作品を唯一無二の所有可能な資産に作り替えたもの。

 同作は2007年、当時暇を持て余していたウェブデザイナーだったビープルが、作画とグラフィックデザインのスキル向上のために始めたプロジェクトから生まれたもの。ビープルは同年5月1日から5000日間にわたり1日1作品を制作し続け、それを1つのデジタル作品としてまとめた。

 2週間続いていた競売では11か国からの参加者が熾烈(しれつ)な入札合戦を展開。クリスティーズによれば、視聴者数は落札直前に過去最高の2200万人に達した。

 クリスティーズによると、ビープルは米現代美術家ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)氏、英現代美術家デービッド・ホックニー(David Hockney)氏と並び、作品の価値が世界で最も高い存命の現代芸術家3人のうちの一人となった。

 ビープルはサウスカロライナ州チャールストン(Charleston)出身で、本名はマイク・ウィンケルマン(Mike Winkelmann)。同作については、JPGファイル形式で制作されたものの「実際のキャンバスに描かれたものと同じくらいの技やメッセージ、ニュアンス、意図がある」と説明している。

 ビープルはまた、「アーティストたちはこの20年以上、ハードウエアとソフトウエアを駆使して作品を創り、インターネット上で配信してきたが、これを真に所有し収集する実際の方法はなかった。NFTによりこれが変わった」とし、「私たちは美術史の新たな一章の始まりを目の当たりにしている」と述べた。(c)AFP