【3月9日 AFP】ティラノサウルス・レックス(T・レックス、Tyrannosaurus rex)のような大型肉食恐竜は、家ネコほどの大きさで生まれてから巨大な成体に成長する過程において、より小さなライバル種の恐竜を生存競争で排除することにより生態系を大きく変化させていた──。米科学者チームがこのほど、この説を裏付ける研究論文を発表した。

 約1億5000万年にわたり地球に君臨していた恐竜は、現代の陸生動物に見られる傾向とは逆に、小型種よりも大型種の方がはるかに多く存在した。2月25日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された論文は、この長年の謎を解くカギとなる可能性がある。

 科学者らの一部は、いかなる巨大な恐竜でも卵からふ化したばかりの幼体は非常に小さく、その成長とともに異なる資源を利用していたとの考えを示している。つまり、より体の小さな別の種が繁栄できたであろう生態系内の位置を、成長過程の大型種が占めていたというのだ。

 この説を検証するため、米ニューメキシコ大学(University of New Mexico)の大学院生キャット・シュローダー(Kat Schroeder)氏率いる研究チームは、世界各地の化石発掘地から集められた恐竜550種以上を含む古生物のデータを調査した。恐竜は草食種および肉食種に分類され、体の大きさ別に整理された。

 調査の結果、T・レックスのような大型の肉食恐竜(獣脚類)が存在したすべての生態系で、中型肉食恐竜の欠落が顕著だったことが見て取れた。

「大型獣脚類が存在していた環境では、体重100~1000キロの肉食恐竜がほとんどいなかった」と、シュローダー氏は指摘する。「大型獣脚類の未成体が、この位置を占めていた」

■未成体を一つの種として捉える

 今回の説は、時間の経過とともに見られた、恐竜種の多様性の変化によって裏付けられた。ジュラ紀(2億~1億4500万年前)は中型肉食恐竜の欠落があまり見られなかったが、白亜紀(1億4500万~6500万年前)ではそれが大きくなっていた。

 その理由は、ジュラ紀の大型獣脚類の幼体と成体の差異がより小さかったことと、捕食対象となる(ブラキオサウルスのような)草食性の竜脚類の種類がより豊富だったことだ。

「一方、白亜紀はティラノサウルスとアベリサウルスによって完全に支配されていた。これらの大型獣脚類は成長するにつれて大きく変化した」と、シュローダー氏は説明する。

 研究チームは仮説を数学的に検証するため、特定の年齢にある幼体の大型獣脚類の生物量に、化石記録に基づき予想される年間生存率を掛け合わせた。

 幼体を実質的に独自の種として捉えるこの統計的手法で、チームは考えられた中型肉食恐竜の欠落部分をほぼぴったりと埋めることができた。

 今回の研究は、長年の疑問を解決する助けになるだけでなく、恐竜に対して生態学的な考察を加えることの重要性を示している。

 シュローダー氏は、「古生物学では、当初から恐竜を単なる化石として捉えることが主流となってきたが、少しずつ、動物として理解する方向に移行しつつある」と説明した。(c)AFP/Issam AHMED