【3月5日 AFP】ミャンマー第2の都市マンダレー(Mandalay)で3日、軍事クーデターに抗議するデモに参加していた若い女性が銃で撃たれ、亡くなった。着ていたTシャツの胸元には、英語のメッセージが記されていた──「全てうまくいくよ(Everything will be ok)」。

 ダンスが大好きで、「天使」の愛称で知られたチャル・シン(Kyal Sin)さん(19)は、いつもファッションにメッセージを託してきた。黒い上着の背中に「私たちには民主主義が必要だ。ミャンマーに正義を。国民の投票結果を尊重せよ」というスローガンを貼り付けて、軍事クーデターに対する抗議デモに参加したこともあった。

 「全てうまくいくよ」という言葉は、たちまち新たなスローガンとなってソーシャルメディアで広がった。4日に行われた葬儀には数千人が参列した。

 チャル・シンさんにとって、ミャンマーに民主主義を取り戻すことは、自分の身の安全よりも重要だった。そして、2月1日に起きたクーデターで拘束されたアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問の解放を求める全国的な抗議デモに身を投じた。

 今週には、抗議デモに行く前にフェイスブック(Facebook)に血液型と電話番号を掲載し、もし自分の身に何かあれば、臓器を提供すると書き込んでいた。

 国連(UN)によると、3日のデモでは少なくとも38人が死亡。クーデター発生後、最悪の流血の事態となった。

 ソーシャルメディアに投稿された動画には、撃たれる直前のチャル・シンさんの様子が映っていた。銃声が響き、催涙ガスが立ち込める中、道路をはい物陰に隠れようとしていた。

 医師はAFPの取材に、チャル・シンさんは頭を撃たれたと話した。

 チャル・シンさんの死が報じられると、インターネットには追悼の言葉や彼女を描いたイラストなどがあふれた。

 4日午前には、人々が花束や花輪を手にひつぎの前に列をつくり、ミャンマーで広く歌われる革命歌「この世の終わりまで忘れない」を歌った。

 ネットでは多くの人がチャル・シンさんを殉難者とたたえ、悲しみを分かち合っている。フェイスブックでチャル・シンさんとつながっていた男性は、こう追悼の言葉を寄せた。「安らかに眠ってください、友よ。われわれは最後までこの革命を闘い抜きます」 (c)AFP