【3月2日 AFP】新型コロナウイルスと闘う医療従事者への暴力行為が昨年、世界で412件確認されたことが、2日に発表されたNGOの報告書で明らかになった。

 紛争地などにおける医療従事者の安全確保を推進するNGO「セーフガーディング・ヘルス・イン・コンフリクト・コーリション(Safeguarding Health in Conflict Coalition)」によると、昨年世界で医療従事者や医療施設を狙った暴力は「少なく見積もって」1172件発生した。うち412件の動機が、新型コロナウイルスの流行と直接的な関連があった。

 例えばメキシコでは、看護師の女性がウイルスを拡散しているとして、集団に襲撃され負傷した。

 また、セネガルの首都ダカールでは、新型コロナで死亡した患者が近所に埋葬されることを拒否した住民が、3人のソーシャルワーカーに石を投げつけた。さらに英バーミンガム(Birmingham)では、医療従事者が近所の住民につばを吐きかけられ、侮辱された。

 こうした暴力の加害者の8割は市民だったが、公的機関によるものもあった。

 エジプトでは、政府の新型コロナ対策を批判した医療従事者らが、治安部隊に身柄を拘束され、テロリスト集団に所属しデマを広めたとして起訴される事件があった。

 同NGOが発表したインタラクティブマップを作成した暴力監視NPO「インセキュリティ・インサイト(Insecurity Insight)」のクリスティーナ・ウィレ(Christina Wille)氏は、「2020年に医療に対する暴力や脅迫が世界的な危機だったことを示す地図だ。79か国で被害があった」と述べた。

 セーフガーディング・ヘルス・イン・コンフリクト・コーリションの創設者で代表を務める、米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)教授のレオナード・ルービンスタイン(Leonard Rubenstein)氏は、世界各国の指導者に対し、デマとの闘いなどから医療従事者を守るよう呼び掛けた。(c)AFP