【3月1日 AFP】アルゼンチンで閣僚の友人らが優先的に新型コロナウイルスワクチンの接種を受けていた問題で、首都ブエノスアイレスなどで2月27日、数千人規模の抗議デモが行われた。この「VIPワクチン」問題をめぐっては、保健相が辞任する事態となっている。

 同国のヒネス・ゴンサレス・ガルシア(Gines Gonzalez Garcia)保健相は19日、友人らが優先的にワクチン接種を受けていたことが発覚し、アルベルト・フェルナンデス(Alberto Fernandez)大統領の要求に応じ辞任した。

 27日、政府機関の集まるブエノスアイレスの五月広場(Plaza de Mayo)にはデモ隊が集結し「私のワクチンは私に」「私たちの金を無駄にするな」などと書かれたプラカードを持って抗議した。デモに参加したイレネ・マルセ(Irene Marcet)さんはAFPに対し、「彼らは政府(閣僚)の友人にワクチン接種をすることから始めた。これは適切ではない。他人の命を奪っている」と訴えた。

 アルゼンチンではこれまでワクチン接種を受けているのは医療従事者と、17日から接種が始まった70歳以上の一般市民のみ。政府は22日、ワクチンの接種計画の対象外にもかかわらず接種を受けた70人の名を公表。この中には38歳の経済相のほか、エドゥアルド・ドゥアルデ(Eduardo Duhalde)元大統領とその家族らの名が挙がっている。

 デモ隊は大統領府カサ・ロサダ(Casa Rosada)前の柵に、遺体袋を模した黒い袋をつり下げて抗議。袋にはワクチン接種を受けた政権に近い有力者の名前が書かれた。デモ隊の行為について、フェルナンデス大統領はツイッター(Twitter)で、「民主主義のもとで行うデモの方法は、政治的指導者の名前のある遺体袋をカサ・ロサダに並べることであってはならない」と非難。この行為に「遺憾」を表明し、「野蛮な行為に黙っていてはいけない」と呼び掛けた。(c)AFP