【2月19日 AFP】南アフリカの沿岸都市ケープタウンにある保護施設で、ウ科の海鳥キノドハナグロウの親鳥に見捨てられたひな千数百羽が、段ボール箱の側面に開いた穴から小さなくちばしを突き出して餌を待っている。

 ひなは首が細長く、白色交じりの黒色の体はまだ柔らかい幼羽に覆われている。先月、ケープタウン沖のロベン島(Robben Island)の岩場で、親鳥に見放されて餓死しかけているところを発見された。ロベン島は故ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元南ア大統領がアパルトヘイト時代に投獄されていた場所だ。

 2000羽近くが船で本土に運ばれ、南アフリカ沿岸鳥保護財団(SANCCOB)の施設に迎え入れられた。絶滅の危険性が高い動物の保護活動には細心の注意が要る。

 施設に運ばれる途中、そして到着の直後に、懸命の救命措置にもかかわらず800羽余りが衰弱と脱水で死んでしまった。

 残りのひなは回復し、今では週に1トン以上のイワシを食べている。

「ひなたちは間違いなく、うちの施設を食いつぶしてしまうでしょう」と、SANCCOBの保護担当責任者のニッキー・スタンダー(Nicky Stander)氏は笑う。

■餌不足でひなを見放した?

 30~50人のボランティアが毎日施設に来て、親に見放されたひなたちの餌やりを行い、体重を測定し、体をきれいにしてやる。

 最も幼いひなは柔らかなタオルで体を包まれ、保育区画にある小さく分かれた囲いの中に入れられている。まだ自力で餌を食べられるほど成長していないため、慎重に人の手でイワシの小片を食べさせ、注射器で水を飲ませる。

 少し成長したひなは、より大きな囲いの中に入れられる。中には翼を広げ始めたり泳いだりするためのスペースがある。

 施設に連れられてきた時は虚弱状態で、体重が300~600グラムほどしかなかったが、健康な成鳥になると、体重は約1キロになると見込まれる。

 中でも最もたくましく成長した個体は施設を出る準備がほぼ整っている一方、保育室のひなたちはまだ今月末まで待たなければならない。

 南ア最大規模の海鳥保護活動を行っているSANCCOBは通常、運営する専用の病院で年間2000個体前後の動物の治療を行っている。

 施設の職員らは、多数のひなが「育児放棄」された今回の現象に当惑しており、憂慮すべき傾向が始まる前触れかもしれないと懸念している。

「当初は、ひなが見捨てられた原因は夏の暑さが厳しかったからだと考えていました」と、スタンダー氏は話す。「ですが、他の科学者らと意見交換した結果、原因は餌不足の可能性が高いと現在は考えています」

 これは周辺海域での魚の乱獲が及ぼす影響に対する「危険信号」だと、スタンダー氏は警鐘を鳴らした。(c)AFP/Tanya STEENKAMP