【2月16日 AFP】2017年、イラク北部の都市モスル(Mosul)は激しい戦闘の末、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の支配から解放された。しかし、それから3年が経過した今も旧市街はがれきの中にある。再建のめどは立っておらず、また経済も冷え込む中、家の持ち主らは買い手を必死に探している。

 ISの恐怖を生き延びたものの、今度は不動産を売却できないという問題に多くが直面している。周囲はまだ戦場のような様相を呈しているのだ。

 旧市街の通りにはがれきが山積みにされ、破壊された建物が町の雰囲気を台無しにしている。ここはかつて、モスクや教会、シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)、そして迷路のように入り組んだ由緒ある通りで名高かった。

 地域一帯には悪臭が漂っている。住民らは、いまだに未収容の遺体があること、下水システムが機能していないこと、ごみが不法投棄されていることが原因だと話す。

「何か月も前から家を売りに出している。暮らすには損傷がひどすぎる」と語るのは、サード・ゲルギス(Saad Gergis)さん(62)。「だが、ひどい臭いを放つ家々に囲まれているので、誰も買いたがらない」

 ISからの解放後、市民の多くは政府による補償や再建を待ち続けたが、無駄だった。国は今も政治的・経済的な危機から抜け出せずにいる。

 ゲルギスさんはどうにかお金をかき集め、郊外の土地をようやく手に入れた。妻と4人の子どものために家を建てる予定だ。

 残忍なISの支配下で3年間生活したゲルギスさんにとって、かつて暮らしていた場所に戻ることは難しい。「戻ると、殺害、爆発、処刑と、ISの恐怖がすべてよみがえってくる」とAFPに語った。

 映像は1月26日撮影。(c)AFP