【2月8日 AFP】南アフリカで昨年1年間に殺されたサイの数が、2019年の3分の2に減った。新型コロナウイルス対策の全国的なロックダウン(都市封鎖)により、密猟者の移動が厳しく制限されたことが貢献しているという。

 1日、公式統計を発表した同国のバーバラ・クリーシー(Barbara Creecy)環境相によると、2020年には少なくとも394頭のサイが殺されたが、前年の594頭からは減った。ただし、移動制限が緩和された時点で、この改善傾向がわずかに逆行したともいう。

 昨年殺されたサイのうち、モザンビークと国境を接し、観光客に人気のクルーガー国立公園(Kruger National Park)の中で殺されたのは、245頭だった。環境相は「コロナ感染症(対策)のロックダウンが厳しかった期間中は、密猟者のクルーガーへの侵入がかなり減っていた」と語った。

「しかしその後、ロックダウンのレベルが緩んで状況が変わった。2020年末にかけて、特に12月は密猟行為が急増した」

 世界のサイの8割近くが生息する南アフリカにおける密猟数は、6年連続で着実に減少している。しかし、サイの角を伝統薬として、時には媚薬(びやく)とうたって売買するアジア市場に押され、密猟者らによるサイの殺りくはやむことがない。

 密猟数の減少は「そこそこの勝利」として喜ばしいが、角への需要がある以上、密猟阻止の手を緩めてはならない、とクリーシー環境相は語った。

 一方、自然保護活動家や野党政治家は、発表された最新統計が、サイの個体数の全体的な減少を見落としていると指摘する。

 国際組織犯罪対策会議(Global Initiative Against Transnational Organized Crime)の東部・南部アフリカ担当ディレクター、ジュリアン・ラーデメイヤー(Julian Rademeyer)氏は「ここ何年か、シロサイとクロサイの正確な個体数が議論となっている」と述べ、「サイが少なくなれば、密猟者がサイを見つけることもずっと難しくなるはずだ」と指摘した。

 世界自然保護基金(WWF)によると、干ばつや密猟が原因でこの10年間、クルーガー国立公園内のサイの数は「70%近く」減少している。

 国立公園管理局の1月の報告によると、クルーガーに残っているシロサイはわずか3549頭、クロサイは268頭のみだ。南アの最大野党、民主同盟(DA)は、同国にいるサイの「存続に厳しい見通しを示す」数字だと述べている。(c) AFP