【1月14日 AFP】インドネシア・スラウェシ(Sulawesi)島の洞窟で少なくとも4万5500年前に描かれた実物大のイノシシの壁画が見つかり、これまで発見された中では世界最古の洞窟壁画だとする研究結果が13日、米科学誌サイエンス・アドバンシス(Science Advances)に発表された。この地域に人類が定住していたことを示す最も古い証拠だ。

 論文を共同執筆した豪グリフィス大学(Griffith University)の研究者マキシム・オーバート(Maxime Aubert)氏がAFPに語ったところによると、この洞窟壁画は2017年、同大研究チームがインドネシア当局と共同で行った調査で、博士課程の学生バスラン・ブルハン(Basran Burhan)氏が発見した。

 洞窟は、最も近い道路からでも徒歩で約1時間かかる人里離れた谷間にある。切り立った石灰岩の断崖に囲まれていて、乾期にしか行けない。現地の孤立先住民ブギス(Bugis)の人々によると、これまで欧米人が目にしたことはなかった。

 縦54センチ、横136センチのイノシシの絵は暗い赤色の土性顔料を用いて描かれ、短い毛が逆立ったたてがみや、スラウェシ島固有種のイノシシの成体の雄に特徴的な顔から角のように生えた一対のいぼが確認できる。臀部(でんぶ)の近くには、2つの手形が押されている。

 このイノシシと向かい合うような位置には、部分的にしか残っていない別の2匹のイノシシの壁画もあり、論文共著者のアダム・ブラム(Adam Brumm)氏は「2匹の闘いか交流を、もう1匹が観察しているように見える」と述べている。

 スラウェシ島では人類が数万年前からイノシシの狩猟を行っていたことが分かっており、狩猟の様子は先史時代の洞窟壁画の主な特徴となっている。

 オーバート氏は、壁画の上に付着した方解石堆積物の放射年代測定を行い、4万5500年前のものだと突き止めた。これにより、壁画が4万5500年以上前に描かれたことは確かだとしている。

 これまで確認されていた世界最古の洞窟壁画は、少なくとも4万3900年前に描かれた狩人と動物の壁画で、同じグリフィス大の研究チームがスラウェシ島で発見したものだった。(c)AFP/Issam AHMED