【1月18日 AFP】中国政府はこれまで延期されていた炭素の排出量取引制度(ETS)の運用を2月から開始する。世界最大の排出国である中国は、2060年までの脱炭素経済の実現を目指して一歩を踏み出す。

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 中国生態環境省は5日、各地方の自治体が大手電力事業者に対し、炭素排出量の上限を課すことを許可する規則を初めて発令した。

 各企業は、原材料調達から廃棄・リサイクルまでに排出される温室効果ガス排出量を二酸化炭素(CO2)に換算した「カーボンフットプリント(CFP)」の少ない他企業から、排出権を購入できるようになる。この制度では排出権をより高額に設定することで、排出量全体を削減することを見込んでいる。

 だが、中国は野心的な再生可能エネルギー目標を掲げているにもかかわらず、電力の60%はいまだ石炭火力発電で賄われており、強力な石炭産業団体が自分たちに有利な制限枠を強く求めるだろうと専門家らは警告している。

 新たな規則の下では、温室効果ガス排出量が年間2万6000トンを超える2200社以上が、2月1日から排出権の取引を開始できる。

 中国全土が対象となる今回の制度は、欧州連合(EU)の域内制度を抜いて世界最大の排出量取引制度となる。

 中国政府は、排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと発表している。

 中国の2019年の温室効果ガス排出量は139億2000万トンで、世界の合計排出量の約29パーセントを占める。

 国際炭素行動パートナーシップ(ICAP)によると、今回の排出量取引制度が完全に運用されれば、その対象は中国の排出量の約3分の1となる。電力部門以外の事業者も対象に含まれるかどうかは明らかになっていない。(c)AFP