【1月6日 AFP】新型コロナウイルスワクチンを常温放置し、使い物にならなくしたとされる米国の薬剤師について、「陰謀論者」で、ワクチンの安全性に関する根拠のないうわさを信じていることが分かった。当局が4日、明らかにした。

 薬剤師のスティーブン・ブランデンバーグ(Steven Brandenburg)容疑者(46)は昨年12月、ウィスコンシン州グラフトン(Grafton)にあるオーロラ医療センター(Aurora Medical Center)で、新型ウイルスワクチンは危険で、ヒトのDNAを改変しかねないという誤った考えに基づき、米製薬大手モデルナ(Moderna)製のバイアル瓶57本を冷凍庫から取り出し、使い物にならなくしたとされる。バイアル瓶1本には、ワクチン10回分が入っている。

 モデルナ製のワクチン、そして米製薬大手ファイザー(Pfizer)と独製薬ビオンテック(BioNTech)が共同開発したワクチンはそれぞれ、遺伝情報を人体に伝え、新型ウイルスに対する抗体の生成を促す伝令RNA(mRNA)技術に基づいている。

 専門家によると、ワクチンがヒトのDNAを改変するという証拠は一切なく、これまでに大勢がmRNAワクチンを接種してきた。

 検察当局によると、これらの新型ウイルスワクチンは超低温での保管が必要で、常温では成分が壊れる可能性があるが、ブランデンバーグ容疑者は2回にわたってワクチンを使い物にならなくしようとした。

 ブランデンバーグ容疑者は当初、ワクチンは誤って常温放置されていたと病院側に報告していた。しかし、後に故意にワクチンを冷凍庫から取り出したと認めた。

 病院はブランデンバーグ容疑者を解雇し、米連邦捜査局(FBI)などの関係当局に通報。容疑者は昨年12月31日に逮捕された。

 IT大手がさまざまな対策を取っているにもかかわらず、ソーシャルメディアは新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)、特にワクチンに関する根拠のない陰謀論であふれている。

 当局と専門家らはこうした陰謀論について、接種へのためらいや接種拒否につながるため、新型ウイルス対策にとって深刻な脅威だと指摘している。(c)AFP