【12月27日 AFP】2020年は、社会的な活動の波がスポーツ界でも巻き起こり、そうした活動を自信をもって支持する選手がかつてない規模で現れた一年だった。

 米大統領選の投票に行くよう呼びかける取り組みを主導した米プロバスケットボール(NBA)のレブロン・ジェームズ(LeBron James)から、無料の学校給食の拡大を政府に認めさせた英サッカーのマーカス・ラシュフォード(Marcus Rashford)まで、今年は今までになく、スポーツ選手が社会活動に熱心に関わった。

 変化のきっかけは、米ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)で5月、武器を持たない黒人のジョージ・フロイド(George Floyd)さんが警察に拘束された状態で死亡した事件で、これを機に、数多くのアスリートが構造的な人種差別と警察の暴力に対して声を上げるようになった。

 全米で抗議デモが起こる中、ジェームズはフロイドさんの死に対していち早く発言し、SNSで「なぜアメリカは俺たちを愛してくれないんだ」と非難した。以前から権利運動や差別反対の活動に積極的だったこともあり、米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の元QBコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)が始めた抗議は、やはり間違いではなかったとも話した。

 キャパニックはサンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)に所属した2016年、国歌演奏中に膝をついて人種差別に抗議する活動を始め、大きな批判を浴びた。しかしNFLのロジャー・グッデル(Roger Goodell)コミッショナーは6月、キャパニックの名前こそ出さなかったものの、選手の声に耳を傾けなかったのは誤りだったと認めた。

 キャパニックの「膝つき」抗議は、世界中で多くの選手が参加し、デモも発生した「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」運動の象徴として採用された。そして、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)でストップしていた各競技のシーズンが徐々に再開すると、膝つきをはじめとした抗議は、欧州サッカーや北米の各種スポーツで試合前の恒例になった。

 米国では、選手による抗議が当たり前になった感がある。

 NBAはこうした活動を全面的に受け入れ、7月にフロリダ州オーランド(Orlando)で再開されたシーズンでは、国歌演奏時に選手が毎試合膝をつき、コートには「Black Lives Matter」の文字が刻まれた。フロイドさんの死後、多くの選手がデモに参加し、再開後のシーズンでは公正な社会を求めるメッセージ入りのユニホームをまとった。

 メジャーリーグサッカー(MLS)と大リーグ(MLB)も同様の取り組みを採用し、アイスホッケーリーグ(NHL)でも、多くの選手がBLM運動の支持を表明した。

 保守的と言われるストックカーレースのNASCARでも、黒人ドライバーのバッバ・ウォレス(Bubba Wallace)がBLM運動をテーマにしたカラーリングのマシンで走った。また、同選手を中心とした活動が実を結び、多くの人が人種差別の象徴と考える南軍旗がレース会場から撤去された。