【12月1日 AFP】新型コロナウイルスの流行で、オーストリア・ウィーンの多くの高級ホテルが、いつまでとも知れない閉鎖に追い込まれたかもしれない。ウィーンには毎年多くの観光客が訪れているが、世界的に渡航制限が敷かれたことで、客足が遠のいたためだ。

 だが、ウィーンを象徴するホテル「ホテル・ザッハー(Hotel Sacher)」は、世界的に有名な同ホテルのチョコレートケーキ「ザッハトルテ」をファンに届けることを決してあきらめない。ドライブイン形式のスタンドで販売しているのだ。ザッハトルテは、その濃厚で優美な味わいで知られる。

 ホテル・ザッハーの従業員の大半は現在、政府の助成を受け、一時帰休扱いとなっている。ホテルの客室とダイニング・ホールはがらがらだが、出張で滞在している5人の宿泊客に敬意を表し、生花を飾ることは欠かさない。

 空室について経営陣は、絶好のメンテナンスの機会と捉えている。コンシェルジュが、人けのない館内で作業員を案内することも。

 ホテルの年間宿泊数2万3000泊のうち、9割以上を海外からの客が占める。オフシーズンの宿泊料金は1泊あたり400~2300ユーロ(約5万~29万円)だ。

 だが、コロナ禍のロックダウン(都市封鎖)で、宿泊による収入源が絶たれてしまった。そんな中、世界中で販売されている同ホテルのザッハトルテは、ブランドの存続に一役買っている。

 上流階級の人々は例年、有名なオペラ座舞踏会(Opera Ball)の前にホテル・ザッハーで夕食をとる。だが、今シーズンはコロナ禍の影響で、同舞踏会の中止が決定された。

 ホテル・ザッハーの副支配人、ドーリス・シュバルツ(Doris Schwarz)氏は「オーストリアの歴史の一部は私たちの手に委ねられています」と語った。

 映像は11月25日撮影。(c)AFP/Blaise GAUQUELIN