【11月30日 AFP】スイスで29日、内外で悪質な事業運営を行った同国に拠点を置く多国籍企業に責任を問える世界で最も厳格な規制の導入を求める議案に関する国民投票が行われ、否決された。

 この議案は、憲法を改正し、自社とサプライヤーが人権と環境保護に関する厳格な基準を順守するよう該当企業に求める内容だった。

 直接民主制のスイスでは、可決には全国の有権者の過半数および、全州の過半数の賛成が必要とされる。投票者の50.7%に当たる129万9173人が賛成票を投じたが、ほとんどの州が反対に回った。これまで国民投票は637回行われてきたが、こうした結果になるのは今回が10回目。

 今回は、軍需企業への資金提供を禁じる議案に関する国民投票も行われたが、こちらも否決された。

 リサーチ団体プロファンド(Profundo)が今月公表した報告書によると、中央銀行のスイス国立銀行(SNB)や大手銀行は、BAEシステムズ(BAE Systems)、ロッキード・マーティン(Lockheed Martin)、ノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)などの軍需企業に計110億ドル(約1兆1450億円)近くを貸し付けおよび投資している。この議案の支持者らは、こうした投資はスイスの中立性と「両立しない」と主張していた。

 しかし政府は、この議案の定義に従えば、民間航空機企業への投資も事実上不可能になり、年金に悪影響が出るとしていた。(c)AFP/Robin MILLARD