【11月28日 AFP】英国では、権利と自由に関する国際定義の土台となった「マグナ・カルタ(Magna Carta、大憲章)」が新型コロナウイルス対策の規制に勝り、ロックダウン(都市封鎖)中も店舗は営業を続けることが認められるのだろうか?──答えは「ノー」。しかし、独自の解釈に基づき、営業継続は許されると主張し続けている事業者もいる。

 イングランド北部ブラッドフォード(Bradford)近郊に住む美容師、シネイド・クイン(Sinead Quinn)さんは今月、全国的なロックダウン中も美容室の営業を続け、罰金は1万7000ポンド(約236万円)に膨れ上がっているが、1215年に制定されたマグナ・カルタを引き合いに出し、ソーシャルメディアで注目を集めている。

 クインさんは、地元当局や警察とやり合った内容をインスタグラム(Instagram)に定期的に投稿。今月投稿した動画では警官に対し、罰金の支払いには応じないとして、「私は法律に違反していない。コモン・ロー(判例法)に従って営業を続けている」と訴えている。別の投稿ではマグナ・カルタの第61条を引用して、「不当に統治されていると思ったら、法的に異議を申し立てる権利が私たちにはある」と主張している。

 こうした動きはクインさんに限らず、イングランド西部ブリストル(Bristol)のタトゥー店や北西部リバプールの子ども用の室内遊具施設も、マグナ・カルタを盾に営業を続けている。

 だが、警察はこうした主張を認めずに罰金を科し、あらゆる事業者に対し、法的な拘束力を持つのは800年前のマグナ・カルタではなく現在の法律だと、くぎを刺している。

 クインさんの地元カークリーズ(Kirkleesl)の自治体は、新型コロナの第2波を抑制するためにイングランド全土がロックダウン中だったにもかかわらず、その1か月間にクインさんの美容室が取った行動は「自分勝手で無責任」だったと非難。自治体の広報担当者はAFPに、クインさんが罰金を支払って引き下がらなければ、「最終的には訴える」と述べた。

 マグナ・カルタは、1215年に専制君主ジョン(John)王が国王の権限を制限することを求めた反乱諸侯らの要求を受け入れて合意したもので、全ての人が正義を享受し、法は平等に適用され、統治者による力の行使が許されるのは法に基づいた場合のみとすること、などを明文化している。

 第61条は、王に自由を侵害された際には、これらの反乱諸侯が抵抗する権利を認めているが、一般の民衆に対する抵抗権は認めていない。(c)AFP/Jitendra JOSHI