【11月23日 AFP】持ち運びできる小型のレーザーポインターを用いて落雷を誘導し、稲妻による森林火災の発生を防止する──そんな対策につながる可能性のある研究がこのほど発表された。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に先月掲載された論文の共同執筆者、豪ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)のアンドレイ・ミロシニチェンコ(Andrey Miroshnichenko)教授は、光の管のような中空のレーザー光線を使って嵐雲まで届くように粒子を送り込み、嵐雲を「短絡(ショート)」させて落雷を導くことができるかもしれないことを、国際研究チームが明らかにした、と語る。

 研究チームは室内実験で、対象物を引き付けるレーザービームを用いて、放電経路を特定の標的へ誘導することに成功したと、ミロシニチェンコ教授はAFPに語った。

 これまでは、同様の結果を実現するには高出力のレーザーが必要だったため、この技術は危険性とコストが高く、不正確なものだった。

 だが今後10年以内に、小型で手持ち操作が可能なレーザーを野外で使用できるようになることが、今回の最新研究で示唆されていると、ミロシニチェンコ教授は指摘した。中空のトラクタービームを用いることで、空気中の微小粒子を加熱して特定の場所に送り込み、放電を誘発させることができたのだ。

 屋外での試験はまだ実施されていないものの、雨を伴わない落雷の制御にこの技術を利用できる可能性があると、ミロシニチェンコ教授は続けた。大規模な火災の原因となることで知られる、雨を伴わない落雷は、過去1年間で、オーストラリアや米西部で複数の重大な森林火災を引き起こしている。(c)AFP