【10月28日 AFP】午前10時過ぎ、フランス南東部リヨン(Lyon)にあるヤン・ラル(Yann Lalle)さんのビストロでは、フランスの定番朝食のコーヒーとクロワッサンではなく、ゆでたソーセージと赤ワインが提供されている。

 新型コロナウイルスの感染者急増を受け、今月から複数の都市で夜間外出が禁止されており、ラルさんは「時間的な制約の中で対応している」と話す。

 ディナータイムの客を奪われた今、ラルさんを含めたリヨンの飲食店経営者は、酒類とボリューム満点の郷土料理を提供する伝統的な朝食「マション」を復活させようとしている。

 リヨンを食の世界で有名にしたマションのメニューには、アンドイエット(ソーセージ)やマッシュポテトのカナッペ、クルミとエンダイブのサラダ、ハムとパセリのパテ、なめらかなハーブチーズが並び、これに合わせてリヨン近郊の有名なブドウ園のワインが提供される。

 朝食を兼ねた昼食のようなマションは、フランス語で「かむ」を意味する「マシェ」に由来する。その歴史は19世紀にさかのぼり、当時、リヨンの絹工場の労働者がその日の最初の休憩時間を最大限に活用しようと始めた習慣だった。

 リヨンには、食通が集まる「ブション」という伝統的な小さなビストロがあり、人々から愛され続けている。

 数十年間もマションを提供し続けているブションがある一方、現在、外出可能な時間帯に客足を回復させる狙いでマションを取り入れている店もある。

 ラルさんのブション「ル・ポワロン・ドール(Le Poelon d'Or)」でマションを満喫する客の一人は、「コロナの状況を忘れさせてくれる。楽しい時間を過ごしながら、乾杯をして食事をする──時間はいつもより少し早めだが、満足だ」と語る。

 ラルさんはテーブルを仕切るアクリル板を購入したが、客足はまだ戻っておらず、他の飲食店と同様に打撃を受けている。

 また、米国人と中国人を中心に外国人観光客が来なくなったことが、さらなる痛手となっている。

 フランスでは春に2か月間の全国的なロックダウン(都市封鎖)が行われたが、再び実施された場合には克服不可能なものとなる恐れがある。

「第1波から立ち直るのは本当に大変だった。この第2波では立ち直れないほどの打撃を受けるかもしれない」とラルさんは漏らす。

 マションは25ユーロ(約3100円)で、夕食まで腹持ちするようになっている。ラルさんは現在、金・土曜日にマションを出しているが、好評であれば他の曜日に提供することも検討するという。(c)AFP/Myriam CHAPLAIN RIOU