【10月23日 AFP】南米ベネズエラ沖に損傷した石油タンカーが放置され、原油130万バレルが漏出して「壊滅的な環境災害」を引き起こす恐れがあると、同国の野党議員らが22日、警鐘を鳴らした。

 ベネズエラとトリニダード・トバゴに挟まれたパリア湾(Gulf of Paria)に停泊するタンカー「ナバリマ(Nabarima)」は、原油の貯蔵に用いられている。だが、漁業従事者などでつくるNGO「フィッシャーマン・アンド・フレンズ・オブ・ザ・シー(FFOS)」は今月16日、ナバリマ号の船体が傾いている様子が確認できる動画を公開した。

 ベネズエラ石油労働組合のエウディス・ヒロット(Eudis Girot)代表はAFPに、全長約264メートルのナバリマ号には2014年から整備上の問題が生じていたが、ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)は一連の問題を「無視してきた」と語った。

 ヒロット氏によると複数のPDVSA従業員から今月12日に、船体が8%傾斜し、機関室が浸水被害を受けているが排水ポンプは壊れているとの報告があったという。

 ベネズエラ野党のロベルト・アルカラ(Robert Alcala)議員は、「原油を移送しない限り、たとえナバリマ号(の船体)を安定させられたとしても、取り返しのつかない壊滅的な環境災害の危険がある」とAFPに述べた。

 一方、トリニダード・トバゴのフランクリン・カーン(Franklin Khan)エネルギー相は22日、「船は真っすぐで安定しており、目に見える沈没の恐れは全くない」との見解を示した。同氏によると、ベネズエラ政府の許諾を得て20日に「専門家」3人がナバリマ号に立ち入り調査を行ったところ、「船内への浸水は確認できなかった。9月上旬に報告された浸水は、もはや存在しない」という。ポンプやモーターなども修理・交換され、保守作業の状況に専門家は「かなり満足」したとしている。

 ナバリマ号の所有会社ペトロスクレ(Petrosucre)はPDVSAが大株主で、イタリアの多国籍の石油・ガス会社エニ(Eni)が残る株式の26%を保有している。PDVSAは今回の指摘についてコメントを出していないが、9月にはナバリマ号が修理されず放置されているとの環境活動家の主張を「フェイクニュース」と一蹴していた。

 PDVSAは米国の制裁対象なため、原油の積み換え作業は進んでいない。

 ベネズエラは歳入のほとんどを原油輸出に依存しているが、10年前に320万バレルだった石油生産量は現在わずか40万バレルに落ち込んでいる。インフラ整備が滞る中、石油や燃料の漏出も頻発している。

 映像は16日撮影・提供。(c)AFP