【10月25日 東方新報】中国北部最大の貿易港・天津港(Tianjin Port)のコンテナ埠頭(ふとう)北区バース。作業員が1人もいない中、コンテナを搭載した自動運転トラックが貨物船の近くまで走り、大型クレーンが自動的に船にコンテナを積み込み、ロボットがコンテナをロックした。17日、全作業工程の無人積み込み作業が中国で初めて実現した。北東アジアのハブ港(海上運送の中継拠点港)として、存在感をさらに高めていくことになる。

 自動運転トラックはレベル4(特定の場所でシステムがすべてを操作)の水準で実用化されており、スマートシステムの指令に従い、誤差はわずかセンチメートルの単位で正確に停車する。3D視覚センサーや測位装置を採用し、ロボットによるコンテナの固定やロック解除作業は6秒から3秒に短縮された。埠頭全体の作業は集中管理システムによりコントロールされ、大型クレーンによるコンテナの効率的な積み降ろし、最短運送ルートの割り出しなどを通じて安全で無駄のない作業が行われる。システムの運行が安定した状態になれば、埠頭全体の作業効率は従来比で14.3%向上すると見込まれている。

 天津港を運営する天津港集団(Tianjin Port Group)によると、今年上半期の同港の貨物取扱量は前年同期比1.7%増の2億800万トンを記録。新型コロナウイルスの拡大という「向かい風」を受けながらも過去最高を更新した。今後はコンテナ積み卸しの完全無人化という「追い風」を受け、取扱量をさらに伸ばすことが期待されている。

 港湾作業の無人化構想は当初、欧米を中心に研究・開発が進んでいた。しかし技術的なネックや膨大な投資の必要性から、完全無人化は困難を極めた。天津港では、港を運営する天津港集団や、自動運転を活用した物流サービスを展開する「主線科技(Trunk Tech)」などの企業が最新技術を駆使して、全作業の無人化を達成した。

 埠頭作業の効率化は、貿易港としての国際競争力を高めることに直結する。また、スマート物流システムは港湾に限らず、閉鎖型、半閉鎖型の多くの作業現場で応用が可能。中国ではいま深刻になっているドライバーの人手不足問題の解消にもつながる。港湾作業の無人化実現は、今後の中国経済の成長に大きな影響を与えそうだ。(c)東方新報/AFPBB News