【10月24日 CNS】中国・安徽省(Anhui)の巣湖のほとりにたたずむ町・柘皋鎮(Zhegao)は1000年の歴史があり、清朝末期から100年以上続く銀細工の店がある。67歳で5代目店主の洪金泉(Hong Jinquan)さんは10代から銀細工を始め、匠(たくみ)の技を受け継いでいる。

 柘皋の旧市街で目を引く古い看板「洪同慶」。黒光りした看板が掲げられた工房で、洪金泉さんは明瞭でリズミカルな音を立てながら、ハンマーで銀をたたく。

 柘皋鎮は明の時代から水上輸送が発達し、商業が盛んな地域。清朝の政治家・李鴻章(Li Hongzhang)が営み、「天下一の質屋」と言われた質店もあった。洪さんの祖先は銀の工芸で生計を立て、その技は代々引き継がれてきた。

 洪さんは「銀細工の宝飾品を作るには銀を溶かした後、冷却、たたき、すりつぶし、形作り、磨きなど10以上のプロセスが必要です」と説明する。最も制作が難しいのはブレスレットや鎖の製作で、アンティークな模様や干支(えと)のデザインは細かく打ち込んで工具で彫る必要があり、完成まで1週間かかる場合もある。

「すべて手作業で作るので、丈夫で長持ちします。光沢も市販の製品より優れています」。洪さんの銀細工は、銀を溶かすのにガス炉を使うこと以外、すべて100年以上前から受け継がれてきた技法だ。ハンマーなどの道具も100年前と変わらない。

 洪さんの銀製品は仕上がりに比べて価格が安いため、多くの市民が注文に訪れる。毎月100点以上の注文があるが、月収は約5000元(約7万8888円)と決して高くない。

 洪さんは「ブレスレット1つを作って手に入るのは30元(約473円)ほど。収入が少ないので、職人になろうとする人がなかなかいません」と打ち明ける。

 洪さんは今、遠方で働いていた息子の洪詩超(Hong Shichao)さんを呼び戻し、伝統工芸を伝えている。

 6代目となる洪詩超さんは「無形文化遺産がどんどん廃れている中、なんとしても伝統を守っていきたい。若い世代にその魅力と可能性をアピールしていきたい」と力を込める。柘皋鎮政府も伝統工芸を受け継ぐ職人や店舗のPRに力を入れ、サポートを図っている。(c)CNS/JCM/AFPBB News