【10月15日 AFP】中米エルサルバドルの獣医師ホセ・コト(Jose Coto)さんが働く環境省の動物診療施設には、けがをしたり、虐待を受けたり、子育てを放棄されたりしたさまざまな野生動物が、日々運び込まれてくる。

 これまで、さまざまな動物を診てきたコトさんだが、翼の一部が切られた猛禽(もうきん)類のオオハシノスリが運び込まれた時はさすがにがくぜんとしたという。オオハシノスリは、アルゼンチン北部から米テキサス州南部まで、アメリカ大陸の広い範囲で生息する鳥だ。

 この鳥にはクリッピング(鳥の羽切り)が施されていた。環境NGO「サルバドラン・エコロジカル・ユニット(Salvadoran Ecological Unit)」代表のマウリシオ・セルメノ(Mauricio Sermeno)さんは、野生の鳥をペットにするために行うクリッピングについて、「鳥に対してすべきでない行為のうちで最も残酷なもの」と説明する。

 コトさんのチームは、運び込まれたオオハシノスリに羽根を「移植」することを決めた。羽根は数か月前に死んだ別の個体から確保し、一つ一つ丁寧に継ぎ足していった。2時間にわたる施術は成功し、体長30センチほどの体には新しい翼があった。

 鳥類の多くは毎年、羽毛が抜けかわって新しい羽毛が生える。ただ今回は「継ぎ羽」を施したことで、翼が元に戻るまでの半年~2年という期間を待たずに済むことになった。コトさんは、もし施術をしていなかったら、翼が元に戻るまでの期間に死んでしまう可能性が非常に高かったと話す。

 ほどなくしてオオハシノスリは、継ぎ足された羽根が取れることなく5メートルほど飛べるようになった。これはチームにとって喜ばしい結果で、近く自然環境に戻されることが決まった。

「野生動物を生息地に戻し、生態系での役割を果たし続けることができるようにすること」が環境省で働く獣医師の主な使命だと、コトさんは話した。

 映像は9日撮影。(c)AFP/Carlos Mario MARQUEZ