【10月14日 AFP】モンゴル帝国の創始者チンギスハン(Genghis Khan)に関する展覧会を計画していたフランスの博物館が12日、中国当局が検閲を試みたとして展覧会を延期すると発表した。

 仏西部ナント(Nantes)にある歴史博物館は、中国・内モンゴル(Inner Mongolia)自治区フフホト(Hohhot)にある内モンゴル博物館(Inner Mongolia Museum)の協力を得てこの企画展を準備してきたが、中国国家文物局が当初の案に変更を求めてきたために問題が生じた。

 ナントの博物館によると、要求された変更点には「新たな国家観にとって有利となる、モンゴル文化に関する偏った書き換えが顕著な要素が含まれていた」という。具体的には「チンギスハン」「帝国」「モンゴル」といった言葉を展覧会から削除するよう要求され、さらに同展に関するテキスト、地図、パンフレットおよび宣伝に対する監督権も求められたという。同博物館ではこの企画展の開催を3年以上は見送るとしている。

 今回の騒動は、中国がモンゴル民族に対する強硬姿勢を強める中で起きた。ナントの博物館は、「今夏、中国政府がモンゴル民族への態度を硬化させたこと」が展覧会延期の一因となったと説明している。博物館長のベルトラン・ギエ(Bertrand Guillet)氏は、「われわれが守る人間的、科学的、倫理的価値観の名の下、今回の展示をやめる決定を下した」と述べた。

 仏シンクタンク、戦略研究財団(Foundation for Strategic Research)のアジア専門家、バレリー・ニケ(Valerie Niquet)氏は、「中国政府は、公式の国家観と一致しない歴史観を禁止しており、国外でも同じことをしようとする」と解説した。

 同シンクタンクの研究員、アントワーヌ・ボンダズ(Antoine Bondaz)氏はツイッター(Twitter)への投稿で博物館の判断を支持し、伝えられている中国の要求は「常軌を逸している」と批判した。

 来週から開幕するはずだった企画展は今年、すでに新型コロナウイルス流行の影響で半年ほど延期されていたが、今回の一件で「2024年10月までは延期せざるを得ない」と博物館は述べている。(c)AFP