【10月12日 AFP】中米パナマの研究所で、絶滅危惧種のパナマゴールデンカエル約200匹が、外界から守られた環境で隔離生活を送っている。壊滅的な被害をもたらす真菌から保護するためだ。パナマに生息する両生類の3分の1が、この真菌によって絶滅の脅威にさらされており、科学者らは「危機的」状況だと表現している。

 黄色や金色の体に黒い斑点が特徴の小さなパナマゴールデンカエルは、首都パナマ市の北に位置するガンボア(Gamboa)にあるパナマ・スミソニアン熱帯研究所(STRI)で、管理の行き届いた水槽環境を享受している。緑生い茂るパナマの固有種にもかかわらず、自然の生息地では一匹も姿を確認されていない。そのため野生では絶滅したと考えられており、繁殖が可能な動物園で約1500匹を見かけるだけとなっている。

 パナマの野生の両生類は今、「スーパー真菌」によって絶滅の危機に直面している。この真菌に対して脆弱(ぜいじゃく)なのはカエル類だけではない。サンショウウオや、四肢がなくヘビに似たアシナシイモリなども危機にさらされている。

 STRIの研究者、ロベルト・イバネス(Roberto Ibanez)氏は「パナマの両生類225種の約3分の1が、何らかの形で脅威にさらされている」という。

 米メリーランド大学(University of Maryland)の分子細胞生物学者、ジーナ・デッラ・トーニャ(Gina Della Togna)氏は、この状況を「危機的」と表現した。

■「スーパー真菌」の正体

 両生類が直面している最大の脅威は、水を介して拡散し、感染症のカエルツボカビ症を引き起こすツボカビだ。科学者らによると、この感染症によってすでに約30種の両生類が絶滅に追いやられたという。

 ツボカビは両生類に感染すると、その表皮に寄生する。すると寄生された両生類は、浸透圧の調整ができなくなる。さらに生体機能に回復不能な損傷を受け、最終的に窒息によって心臓が停止し死に至る。

 20世紀に朝鮮半島(Korean Peninsula)で初めて確認されたこのツボカビは、今や全世界に広まっていると科学者らは警告している。

 パナマでは1990年代初めに確認されて以来、このツボカビが大きな被害をもたらしている。STRIのイバネス氏は「両生類以外の生物種にも影響を及ぼす恐れがあるスーパー真菌だ」と言う。さらにイバネス氏は、人間による森林伐採や環境破壊、河川汚染などが問題を悪化させていると警告した。