【10月2日 AFP】陸上女子800メートルの女王で、ホルモン値を抑制しない限り一部のレースに出場できなくなっているキャスター・セメンヤ(Caster Semenya、南アフリカ)の担当弁護士が、欧州人権裁判所(ECHR)に処分の不服を申し立てる準備を進めているとAFPに明かした。

 五輪で二つの金メダルを獲得しているセメンヤには、体内のテストステロン(testosterone)値が高い原因となる「体の性のさまざまな発達状態(性分化疾患、DSD)」という遺伝的変異がある。

 ワールドアスレティックス(World Athletics、世界陸連)は2018年、セメンヤをはじめ400メートルから1マイル(約1600メートル)の種目を競うDSDのアスリートを対象に、ホルモン値を抑制する薬の摂取を義務付ける規定を導入した。

 現在29歳のセメンヤは、この規定に関してスポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議を申し立てたが敗訴。さらに、スイス最高裁にも上訴していたが、先月に訴えは退けられた。

 セメンヤの担当弁護士を務めるグレゴリー・ノット(Gregory Nott)氏は、先月30日に行われたインタビューで、「裁定には完全に驚いたというわけではなかった」と述べると、スイス最高裁への訴えについては、「勝訴するには非常に難しい」ケースだったと指摘した。

 また、裁定が下ったときの様子を振り返り、「キャスターはいつも通り、非常に毅然(きぜん)とした態度でしっかり受け止めていた」「さらなる闘いにも乗り気だ」と明かした。

 同氏によれば、現在セメンヤの法律チームがECHRに持ち込むための書類を準備しており、そのプロセスは「さらに数か月」かかる見通しであるという。

 訴訟を起こすか否かは、準備が整った後に同選手が決めるとし、「われわれは単なる馬であり、彼女が騎手だ。従ってわれわれは彼女の意思に従う」「彼女は自分なりの考えを持っている」と付け加えた。(c)AFP/Sofia CHRISTENSEN