【9月29日 AFP】朝鮮半島(Korean Peninsula)の西側の南北境界線付近の海上で先週、北朝鮮兵に射殺され、その遺体が焼かれたとされる韓国の海洋水産省職員について、その兄が29日、男性は亡命など絶対にしなかったはずだと述べ、遺体の返還を北朝鮮政府に要求した。

 韓国政府は、男性は亡命を試みようとして船から脱走したとの見方を示していた。またこの男性の射殺について金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-un)朝鮮労働党委員長は「予期せぬ不名誉な出来事」だと述べ、異例の謝罪を行った。

 国境警備隊は29日、初期調査の結果から、自殺企図および船からの転落事故の可能性は除外したと発表。また男性にはギャンブルによる巨額の借金があったことも明らかにした。

 しかし男性の兄はこの発表内容に異議を唱え、男性に亡命を計画していた様子は見られず、自身の仕事に誇りを持っていたと述べた。

 首都ソウルで外国特派員向けに記者会見した兄は「当局が繰り返しているのは、弟の家庭問題と借金の話ばかり…それなら韓国の一般市民50~60%が皆亡命するというのか」と指摘。

「弟の死の2日前にも話をしたが、亡命に言及することも、ほのめかすこともなかった」と明かした。

 その上で「北朝鮮の金正恩委員長に対し、弟の返還を切に求める」と訴えた。

 北朝鮮は、新型コロナウイルス感染の懸念から男性が使っていた救命胴衣のみを同国兵士が燃やしたと説明したことを受けて、韓国の国境警備隊と海軍が男性の遺体の捜索を続けている。

 韓国は今回の事件について、北朝鮮との合同調査を要求。これに対し北側は沈黙を続けているが、27日に遺体の独自捜索を開始する方針を発表した。(c)AFP