【9月29日 Xinhua News】中国の主要な食糧生産省として知られる吉林省(Jilin)では8月下旬から9月上旬にかけ、台風8号と9号、10号が相次ぎ上陸し、農業やインフラに被害をもたらした。一方、その後の救援・復旧作業では、衛星が重要な役割を果たしたという。

 中国東北部は国内で最も肥沃(ひよく)な土壌を持つことから「中国の穀倉」と呼ばれる。吉林、黒竜江(Heilongjiang)、遼寧(Liaoning)3省の2019年の食糧生産量は1億3800万トン余りと全国の食糧生産の五分の一以上を占めた。

 科学教育の分野でも優れた基盤を持ち、衛星の研究開発や設備製造で高い実力を持つ。吉林省に拠点を置く宇宙ベンチャーの長光衛星技術は、2015年に中国初の商用高解像度リモートセンシング衛星「吉林1号」の打ち上げに成功して以降、これまでに衛星25基からなるネットワークを構築。データの受信や処理・配信、応用サービスを統合した衛星データ産業チェーンを形成している。農業は同衛星ネットワークの重要な応用分野だという。

 「吉林1号」衛星ネットワークのデータを利用することで、農業従事者は栽培作物の種類と面積を画像で識別できるだけでなく、苗の生育状況や乾燥の程度を判断し、収量を推定することもできる。これらの技術は同省長春市(Changchun)農安県などで既に試験導入されている。

 幾つかの企業は衛星データを農作業の複数の工程で活用している。ソフトウエア開発やスマート設備製造を手掛ける吉林省佰強科技は「クラウド」かんがい管理システムを開発。衛星画像と水田に設置したセンサーを組み合わせ、地域の地形や用水路の方向をスマートフォンなどにリアルタイムで表示できるようにした。

 同システムは、水田の水が不足すると自動的にアラートを発する。管理者側もスマートフォンで水門を遠隔操作できるなど、自動化された管理を行える。出張中であってもリアルタイムで水田の状況を把握できるという。

 業界関係者は、農業近代化の鍵は農業科学技術の近代化にあると指摘する。衛星などの現代技術を取り入れることで、農家はより良い食糧を生産できるとし、中国の食料安全保障にもつながるとの見方を示している。(c)Xinhua News/AFPBB News