【9月24日 AFP】韓国軍関係者らは24日、韓国から北朝鮮入りを試みた「脱南者」とみられる男性を、北朝鮮の兵士らが海上で何時間にもわたって尋問した後に射殺し、新型コロナウイルスの予防措置としてその遺体を焼却したと発表した。

 北朝鮮軍による韓国民間人の殺害は、ここ10年で初めて。北朝鮮当局が、新型ウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)に対して厳戒態勢を敷き、南北関係が冷え込む中での事件発生となった。

 韓国軍関係者がAFPに明かしたところによると、海洋水産省の関係者とされるこの男性は、南北の境界付近に位置する韓国北西部の延坪(Yeonpyeong)島近くで21日、乗っていた巡視船から姿を消した。

 同関係者の話では、男性の行方が分からなくなってから24時間余り経過後、北朝鮮軍が自国水域で男性を発見し、巡視船から男性に尋問。発見から約6時間後に「男性は海上で射殺」され、「北朝鮮軍の兵士らが、男性の遺体の上に燃料を注ぎ、海上で燃やした」という。

「北朝鮮の新型ウイルス対策の一環での対応とみている」と、同関係者は話している。

 北朝鮮は国境を閉鎖しており、新型ウイルスへの対抗措置として非常事態を宣言している。韓国国防省によると、遺体を燃やした兵士らは、ガスマスクと防護服を着用していたという。

 北朝鮮側は現時点ではコメントしていない。また今回の事件に関する韓国軍の説明についても、独立検証することはできない。

 上述の韓国軍関係者は、男性は救命胴衣を着用しており、靴は先に乗っていた韓国の巡視船内で見つかったことから、自発的に北朝鮮の海域に入ったことが示唆されていると述べている。

 さらに「尋問を受けた際、男性が亡命の意思を表明していたという情報を入手している」ことも明らかにした。

 韓国の聯合(Yonhap)ニュースは韓国政府関係者らの話として、男性の射殺は「上層部からの命令」だったと報じている。

 韓国国防省は、男性の射殺を「蛮行」だと厳しく非難している。(c)AFP/Kang Jin-kyu