【10月4日 AFP】パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza strip)に住むジャボアさん夫婦は、慣れた手つきで着ぐるみや衣装を見事に縫う。障害のある夫婦は着ぐるみ作りで生計を立ててきたが、新型コロナウイルスの流行によって得られていたわずかな収入にも大きな影響が出ている。

 ニハド・ジャボア(Nihad Jarboa)さん(37)は子どもの頃から障害があった。そして、妻のゼイナブさん(35)は2人目の子どもの出産時に希少疾患にかかり、両足を切断した。一家はガザ南部ラファ(Rafah)の難民キャンプにある寝室一つのアパートで暮らしている。

 イスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が実効支配するガザ地区では、貧困率が50パーセントを超えている。イスラエルの報復措置で物資輸送が止められているこの地で生計を立てることは難しく、車椅子を利用している夫婦にとっては、その職業選択の幅はさらに狭い。

 ジャボアさん夫婦は、漫画のキャラクターからアイデアを得た着ぐるみや衣装を作るスキルを身に付け、着ぐるみの販売や、保育園や学校に自分たちの作った衣装を着たパフォーマーを派遣することで、わずかな収入を得ている。

 ニハドさんは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が起きる前は「着ぐるみ1体当たり10シェケル(約300円)で、月におよそ20〜30体の人形が売れていた」と話し、またパフォーマーを派遣するたびに約20シェケル(約600円)の収入があったと述べた。しかし、パンデミックですべてなくなり、着ぐるみの売り上げはそれまでの4分の1になったという。

 ゼイナブさんは、キャラクターの「ドナルドダック(Donald Duck)」からひらめきを得たという鮮やかな色の衣装を縫いながら、「大変だけど諦めない」と語る。そして、「新型ウイルスでつらいことばかりだけど、私は負けない。子どもたちがまともな生活を送れるように育てたいから」と続けた。

 ただ、ガザの住民の約半分が受けている、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)からの支援では「食品を買うのもやっと」であると述べ、置かれた状況が非常に厳しいものであることを説明した。(c)AFP/Adel Zaanoun