【9月17日 AFP】1億年前に現在のミャンマーで琥珀(こはく)の中に閉じ込められた小さな甲殻類の体内から、世界最古とみられる動物の精子が見つかった。

 中国科学院(Chinese Academy of Science)南京地質古生物研究所(Nanjing Institute of Geology and Palaeontology)の研究者率いる専門チームによると、これまでに確認されている最古の化石化した動物の精子は、わずか1700万年前のものだという。

 16日に英学術誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に掲載された論文によると、5億年前から存在し現在でも各地の海に生息する甲殻類の一種、貝虫の雌の体内から複数の精子が見つかった。

 そのため、この雌は樹液に閉じ込められる直前に受精したとみられるという。

 今回の発見がさらに特別な理由は、この精子は「巨大」で、その大きさは雄の体の最大4.6倍に上ることだ。

 共同執筆者の独ルートビヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(Ludwig Maximilian University of Munich)のレナーテ・マツケカラス(Renate Matzke-Karasz)氏はAFPに対し、「これは身長170センチのヒトだと約7.3メートルに相当する」とし、こうした巨大な精子をつくるには「多大なエネルギーが必要」だと述べた。

 ヒトを含む動物の雄のほとんどは、一般的に数千万の非常に小さな精子細胞をつくるが、貝虫類にとっては量より質がすべてだ。

 巨大な精子の進化論的な意味については、矛盾する複数の仮説が立てられている。

 マツケカラス氏は「例えば、雄同士の競争率が高い個体群では精子の寿命が長くなる一方、競争率が低い個体群でも精子の寿命が長くなることが実験で分かっている」と説明。

 今回の発見は、「巨大な精子による繁殖は絶滅の危機にひんした際の進化上の行き過ぎではなく、種の生存に重大かつ長期的な利点があった」ことを示していると結論付けた。

 映像は独ルートビヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンより16日提供。(c)AFP