【9月15日 AFP】アジア開発銀行(ADB)は15日、アジア太平洋地域の今年の経済成長率見通しをマイナス0.7%に下方修正した。前回6月に発表した見通しではプラス0.1%だった。新型コロナウイルス流行の影響で、「同地域では1960年代初期以来、最大の国内総生産(GDP)縮小」となるという。

 新型ウイルス流行で落ち込んだ景気の回復は、V字形ではなく、来年まで長引く「L形」あるいは「スウッシュ形」になるとADBは予想しており、コロナ対策によるさまざまな制限によっては回復軌道から外れるとも警告している。

 ADBはアジア太平洋地域全体で「景気は低迷しており、域内諸国の4分の3では経済が縮小すると予測されている。過去60年間で最大だ」と述べている。また大半の地域のGDP成長率は、来年には6.8%まで回復する見込みだが、新型ウイルス流行前の予測と比較すると「大幅に低い」という。

 さらに新型ウイルス対策で厳格な行動制限を再導入すれば、経済回復が阻まれるだけでなく、「金融不安」さえ引き起こしかねないと警告している。

 新型ウイルスは、世界で2900万人以上が感染するパンデミック(世界的な大流行)となった。

 昨年末に最初に新型ウイルスが確認された世界第2の経済大国・中国は、流行の封じ込めに成功し、アジア太平洋経済の下降トレンドに逆行する数少ない国の一つとなっている。ADBによると経済成長率は今年が1.8%、来年が7.7%と予測される。

 対照的に480万人が感染し、長期間のロックダウン(都市封鎖)を実施したにもかかわらず被害の大きかったインドは、今年の見通しはマイナス9%だが、来年にはプラス8%まで回復する見込み。

 アジア太平洋地域ではここ3~4年で貧困層が減少していたが、新型ウイルスによる経済収縮によって逆行し、貧困人口は少なくとも7800万人まで増えると予想されている。(c)AFP