【9月4日 AFP】米アラスカ州とロシア極東に挟まれた太平洋最北部のベーリング海(Bering Sea)で、冬季の海氷面積が過去5500年間で最小となっていることが分かったとする研究結果が2日、米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に発表された。

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 研究チームは、ベーリング海に浮かぶアラスカ州の無人島、セントマシュー(St Matthew)島の泥炭層に着目。過去5500年にわたって堆積した植生を分析し、酸素原子の同位体である酸素16と酸素18の比率が泥炭層中でどのように変動しているかを調べた。この2つの酸素同位体の存在比は、大気・海洋の変化や降水量と経時的な相関関係がある。

 米地質調査所(USGS)の科学者で米アラスカ大学(University of Alaska)でも研究を行ってきたミリアム・ジョーンズ(Miriam Jones)氏は、セントマシュー島について「ベーリング海の真ん中にある小島で、周囲の海や大気に起きていることが原則として記録されている」と説明する。

 分析に参加したアラスカ大学の研究所「アラスカ安定同位体施設(ASIF)」のマシュー・ウーラー(Matthew Wooller)氏は、「われわれの最近の発見は過去5500年間で前例のないことだ」と述べた。

 北極海とベーリング海では夏になると海氷が融解し、冬に再び凍結する。だが、衛星観測の記録は1979年までしかさかのぼれない。

 北極海ではこの数十年間、地球温暖化や大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の上昇と同時進行で、冬季の海氷が明らかに、また急速に縮小している。一方、研究チームによればベーリング海の海氷面積は数十年間にわたって安定しており、激減が観測された2018年と19年だけが例外だという。

 今回用いた分析手法なら、現在のベーリング海における海氷の状態が変則的な事態なのか、それとも一貫した傾向の一部なのかを、観測記録のない時代までさかのぼって確認できる。

 研究チームは、このままいけばベーリング海は完全に「海氷ゼロ」となる可能性が高く、生態系への影響が連鎖的に波及すると結論付けている。ジョーンズ氏は、「単に気温が上がっているだけではなく、もっと多くのことが起きている」「海洋と大気の両方で、循環パターンに変化が見られる」と指摘した。(c)AFP