【8月29日 AFP】2500年以上にわたり居住地区となっていたイエメンの首都サヌアの旧市街は現在、泥水に覆われ、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)にも登録されている同地区のれんが造りの家々が洪水の影響で倒壊して壊滅的な被害が出る危機に直面している。

 専門家は、黄土色のれんがのファサード(正面部分)と白い格子細工の窓を特徴とする建造物の倒壊に、洪水が追い打ちをかける危険性を指摘している。

 内戦による爆撃で、すでに建物の土台はもろい。サヌアは2014年以降、イエメン北部の大部分を掌握している反政府武装勢力フーシ派(Huthi)と政府軍の戦闘に耐えてきた。

 一方で、イエメンでは例年、この時期に洪水が起き、アラビア半島で最も貧しいこの国は、国連(UN)が世界最悪の人道危機と見なす状態に置かれ、荒廃してきた。

 しかし、今年の洪水は特に厳しいものだった。政府と地方当局によると、7月中旬以降、同国全土の洪水による死者は少なくとも172人に上る。

 泥れんがの「摩天楼」として有名なシバーム(Shibam)などの世界遺産もまた、豪雨による危機に直面している。

 フーシ派の保健当局筋はAFPに対し、サヌアではこれまで、五つの旧市街を含め、106棟の建物が損壊し、156棟が被害を受けたと語った。

 イエメンの歴史的な街を管理する当局者、ドーア・ワッセイ(Doaa al-Wassiei)氏は、この被害は数年に及ぶ「放置と維持管理不足」のせいだと語った。

「サヌアは文字通り消えつつある。街への爆撃で基盤がもろくなっていたところに、雨がとどめを刺した」と、ワッセイ氏は言う。同氏は、イエメンの歴史遺産を保護する会のメンバーでもある。

「内戦で予算は間違いなく圧迫されているが、これは私たちのアイデンティティーに関わることであり、国を守るのと同じように、私たちは自らのアイデンティティーを守らなければならない」とワッセイ氏は述べた。

 ユネスコは、「世界遺産を含むイエメンの多くの歴史的な地区で、人命と遺産が失われたことを非常に残念に思う」とコメントを発表。「ユネスコは国際的なパートナーと共に、イエメンの文化遺産を保護するために資源と専門知識を提供」し、自治体の再建や支援などを含め、多くのプロジェクトを実施していると述べた。

 映像は10日撮影。(c)AFP/Abdelkarim al-Marani/ Hadbaa al-Yazidi in Shibam