【8月19日 AFP】アフリカに生息する小型哺乳類の一種、ソマリハネジネズミが約50年ぶりに確認された。この間、この動物を確認したとの報告が一例もなかったため、科学者らはソマリハネジネズミが地上から姿を消した恐れがあると考えていた。

 だが、18日に発表された調査結果によると、餌を探すためのゾウのような長い鼻を持つこのハネジネズミは、「アフリカの角(Horn of Africa)」と呼ばれるアフリカ大陸北東部の乾燥した岩の多い地域で静かに繁栄しているという。

 昆虫を主食とし、人目につきにくいこの動物は、ゾウでもネズミでもない。センギとも呼ばれるハネジネズミは、ツチブタ、ゾウ、マナティーなどの遠い親戚にあたる。ネズミほどの大きさで強力な脚を持ち、時速30キロ近くで走ることができる。

 しかし1970年代以降は、その姿を誰も確認していなかった。そのため、世界の自然博物館に収蔵された39体の保存標本が、かつて存在していたことを示す唯一の物的証拠として残されるだけとなっていた。そのような状況を受け、米テキサス州に拠点を置く野生生物保護団体「グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション(Global Wildlife Conservation)」は、ソマリハネジネズミを「25大最重要探索対象消失種(25 Most Wanted Lost Species)」リストに含めていた。

 そして、昨年実施された遠征調査で科学者チームが自然環境に生息するこの動物を見つけ、ソマリハネジネズミの生息範囲がソマリア国内に限定されないことが明らかになった。

 チームは、ソマリア、エチオピア、エリトリアなどの国々と国境を接するアフリカの角の沿岸小国ジブチで、さまざまな種類のハネジネズミの探索を行っていた。調査では、ピーナツバター、オートミール、酵母エキスなどを詰め込んだわながジブチ内の12の地域に1250か所以上設置された。調査活動を支えたのは、地域コミュニティーとの情報交換だった。地元の人々は写真からハネジネズミを容易に見分けることができた。

 調査チームに参加したジブチの自然保護活動家は、同国内で21年間にわたり実施してきた実地調査の間に自身もハネジネズミを目撃したことがあると話していた。だが、それらが姿を消して数十年にもなるソマリハネジネズミかどうかは誰にも分からなかった。

■「低危険種」にするよう提言

 最終的に、今回の遠征調査で確認できたソマリハネジネズミの数は12匹に上った。

 この調査結果により、ソマリハネジネズミは絶滅しておらず、ソマリアの国境をはるかに越えた範囲に生息していることが判明したと、調査チームは生物医学系の科学誌「PeerJ」に掲載された論文の中で述べている。

 調査チームは今回の結果を踏まえ、絶滅危惧種をまとめた国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト(Red List of Threatened Species)」で、ソマリハネジネズミの分類を「情報不足種」から「低危険種」に評価し直すことを提言している。(c)AFP/Amélie BOTTOLLIER-DEPOIS