【8月13日 AFP】世界では今年、新型コロナウイルス感染に加えて、バッタの大群襲来による農作物の深刻な被害が大きなニュースとなっている。こうした壊滅的な害をもたらすバッタの群れは、なぜ形成されるのか──秘密はフェロモンにあるとする研究結果が12日、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

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 この研究によれば、同じ種類のバッタが何匹か近距離に集まると、ある化学物質が放出され、まるで魅惑的な香水のように互いを誘引する。誘われて寄ってきたバッタも同じ化学物質を放出するため、連鎖的な誘引反応が起きるという。

 中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の康楽(Le Kang)教授らの研究チームは、バッタの中でも最も広範囲に分布するトノサマバッタに注目し、放出する複数の化合物を分析した。

 すると、特に「4-ビニルアニソール(4VA)」と呼ばれる化合物が放出されると周囲のバッタを引き寄せ、群れに集まるバッタが多ければ多いほど、4VAの放出量が増えることが分かった。

 研究によると、トノサマバッタはたった4匹を同じケージに入れただけで、それぞれが4VAを放出し始めた。研究チームはさらに、バッタがフェロモンに反応する様子を観察し、触角の特定部位に4VAを検出する機能が備わっていることを突き止めた。

 この検出機能に必要な遺伝子を特定し、遺伝子操作で鍵となる遺伝子「Or35」を欠いたトノサマバッタを生み出したところ、このバッタは「野生のトノサマバッタと比較して、4VAに誘引されなかった」という。

 この発見に基づき、遺伝子操作によってバッタの群生を食い止めたり、4VAの放出を追跡することで大群の発生を予測したり、4VAを利用したわなでバッタをおびき寄せて駆除したりといった蝗害(こうがい)対策の可能性が期待されている。(c)AFP/Sara HUSSEIN