【8月6日 People’s Daily】汽笛が静寂を破り、見渡す限りの野原を蒸気機関車が走り抜ける。

 中国遼寧省(Liaoning)調兵山市(Diaobingshan)にある「鉄煤蒸気機関車博物館」には、今も走行可能な21台の蒸気機関車が保管されている。国内外の愛好家がカメラを持って連日訪れ、映画やテレビのロケ地としてにぎわっている。技術の革新により勇退した蒸気機関車が、ここでは歴史と文化とロマンを車両に積み込みながら、「現役」として元気な姿を見せている。

 炭鉱が豊富な調兵山市は、地元企業の鉄煤集団が採掘を行い、多くの蒸気機関車が輸送で活躍した。20年にわたり運転士を務めた50歳の閻石(Yan Shi)さんは「毎日車体を磨き、油を差し、炭鉱労働者らを乗せて運転した。20年はあっという間。2002年にディーゼル機関車に切り替わり、運転環境はすごく良くなったけど、蒸気機関車の振動と音が懐かしかった」と振り返る。

「蒸気機関車は1988年に生産を停止してから順番に引退し、2002年には完全に切り替わりました」と博物館責任者の劉春山(Liu Chunshan)さん。蒸気機関車は、スクラップか溶解処分されるのを待つだけとなった。

 ところが、蒸気機関車を懐かしんで訪れる人が後を絶たず、鉄煤集団は考えを改めた。「蒸気機関車は過去の遺物でなく、貴重な観光資源だ」。そうして鉄煤蒸気機関車博物館が誕生する。

 1943年製造のKD6487型蒸気機関車をはじめ博物館にある21台の車両はすべて保存状態が良く、運行が可能。博物館を2000年に開放して以来、人気はどんどん高まり、外国からも観光客が訪れた。ある旅行客は「蒸気機関車が走る音は、一種のオーケストラです」と称賛し、「蒸気機関車が各地のレールから姿を消した今、私と同じように懐古の念を抱いて訪れる人は多い」と話す。

 博物館は歴史をとどめる場所としてだけでなく、「最先端の地」にもなっている。博物館の蒸気機関車はインフルエンサーたちがSNSにアップロードする人気スポットとして定着。テレビや映画のロケ地としても重宝され、スタジオ設備が年々増えている。

「蒸気機関車観光」は今や、遼寧省の一つのブランドとなっている。鉄煤集団は実物の4分の1スケールの小型蒸気機関車を3台製造。観光客は専用線で自ら運転を体験できる。蒸気機関車を改造した観光列車に乗ることもできる。観光収入は5年続けて500万元(約7500万円)を上回り、累計で4000万元(約6億円)を超える。

 多くの蒸気機関車が今も現役で走り、観光客が小型機関車の運転体験もできることから、鉄煤蒸気機関車博物館は「動く博物館」と評判だ。劉さんは「世界各地にある蒸気機関車博物館の中でも、非常に魅力的な場所でしょう」と自信を持って語っている。(c)People's Daily/AFPBB News