【8月4日 東方新報】中国バドミントン界の「天王」こと林丹(Dan Lin、リン・ダン)選手が7月上旬、微博(ウェイボー、Weibo)で正式に引退することを発表し、中国ナショナルチームでの選手人生の幕を閉じた。これで東京五輪の中国チームの名簿に「スーパー・ダン」の名前が載らないことが決定し、中国バドミントンはポスト林丹の時代に入る。

 林丹氏は「37歳の私には、体力的にもケガの具合も、すでにほかの代表選手と肩を並べて戦うことが許されなくなった。感謝と、悔しさと、どうしようもないという気持ちとでいっぱいだ。この後の日々は、より多くの時間を家族と過ごし、新たな「コート」を探していくことになる」とコメントしている。

 1983年に福建省(Fujian)で生まれた林丹氏は、2000年の17歳でナショナルチームに入ったミレニアム世代。北京五輪ロンドン五輪で男子シングルス初の金メダル連覇を達成したほか、世界選手権、トマス杯(Thomas Cup)、スディルマン杯(Sudirman Cup)を含めた世界タイトルで金メダル総数はこの20年間で、20個に及ぶ。2002年に世界ランキング1位となり、その後は2007年までその地位をキープした中国バドミントン界のレジェンドだ。通算5回の五輪に出場し、中国ナショナルチームの中心となって支えてきた。

 林丹氏とロンドン五輪を決勝フルセットで戦うなど、何度も激戦を繰り広げてきた同時代の最大のライバル、マレーシア選手のリー・チョンウェイ(Chong Wei Lee)氏(38)は2019年6月、鼻咽頭がんの治療のために引退。この時、林丹氏は「だれも私のそばにいない、一人になってしまった」と寂しげにコメントしていた。2012年に引退したデンマーク選手のピーター・ゲード(Peter Gade)氏、2013年に引退したインドネシア選手のタウフィック・ヒヤダット(Taufik Hidayat)氏とかつて世界バドミントン四天王と呼ばれた四人のうち、最強にして最後の天王・林丹氏の引退はバドミントン界が一つの黄金時代に終わりを告げたということだろう。

 東京五輪のバトミントン出場規則によれば、男子シングルの出場枠は2席。31歳の諶竜(Long Chen、チェン・ロン)選手と24歳の石宇奇(Yuqi Shi、シー・ユーチ)選手と出場権を争っていたが極めて劣勢ではあった。林丹氏は2019年の世界選手権混合ダブルスでようやく一つ優勝、2020年は全英選手権で二つ銀メダルを取っただけで選手人生25年の間で最も成績の悪い一年だった。さらに東京五輪の延期によって、男子シングル出場枠の可能性はさらに難しくなり、引退を決断した。

 偉大なるレジェンドの引退を受け、移り気なファンたちの間では、ポスト林丹が誰かという話題も出ている。目下、世界ランキング1位の桃田賢斗(Kento Momota)選手が注目を浴びているが、スーパー・ダンの記録と栄光を塗り替える選手の登場は今しばらく待たねばならないようだ。(c)東方新報/AFPBB News