【7月29日 AFP】ワールドアスレティックス(World Athletics、世界陸連)は28日、長距離界に革命を起こしているカーボンファイバー入りのシューズをスポンサーのいないエリートランナーに提供する仕組みを構築中だと話した。技術の進歩が覆せないアドバンテージになっていることを実質的に認めた形となる。

 陸上長距離界では、一歩ごとに強力な推進力をもたらすカーボンプレートが入った米ナイキ(Nike)の「ヴェイパーフライ(Vaporfly)」シリーズを履いた有力選手が次々に自己ベストを出し、2019年の世界6大マラソン大会では、表彰台の36枠のうち31枠をナイキ製シューズを履いた選手が占めた。

 男子マラソンのエリウド・キプチョゲ(Eliud Kipchoge、ケニア)は、ナイキのシューズのさらに進化したバージョンを履き、2019年10月に非公式ながら世界で初めて2時間の壁を破った。シューズは不公平な状況をつくっているという批判を呼び、現在は他のメーカー各社もカーボンプレート入りのシューズを開発している。

 その中で、すでにソールの厚さを40ミリ以下に制限するルールを施行している世界陸連はこの日、同規定を維持。さらに、「アスレチックシュー・アベイラビリティー・スキーム」という新たな取り組みとして、スポンサーと契約していない選手にシューズを提供することを発表した。

 連盟は、2021年に延期になった東京五輪まで「技術の現状を維持する」ためのルールだと話している。その後はシューズメーカーと世界スポーツ用品工業連盟(WFSGI)の代表者らからなる作業部会が、「イノベーションと競技上のアドバンテージ、普遍性、入手しやすさの正しいバランスを実現したパラメーターを設定する」という。

 世界陸連のジョン・リジョン(Jon Ridgeon)最高経営責任者(CEO)は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で東京五輪が延期になったことで、「利害関係者や専門家と相談し、2021年後半まで競技の指針となるルールを修正する時間が増えた」と話している。

「われわれは今市場にあるテクノロジーと、東京五輪まで現状を維持するために引くべき一線への理解を深めている」 (c)AFP