【7月27日 AFP】北朝鮮の国営朝鮮中央通信(KCNA)は26日、国内で新型コロナウイルスの感染疑い例が発生したと伝えた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が北朝鮮に到達した可能性があると同国が認めたのは初めて。

【写真特集】視察する北朝鮮の指導者、金正恩氏

 KCNAは、「この悪性ウイルスに感染したと疑われる人物は違法に境界線を越え、7月19日に戻ってきた」と伝えた。しかし韓国では、境界線を越えて北朝鮮に入った人物がいるという報告はない。

 北朝鮮政府は、隣国の中国で新型コロナウイルスの感染が拡大したことを受けて今年1月下旬に国境を封鎖。数千人の国民を隔離する厳しい制限措置も取り、国内に新型コロナウイルス感染症患者は一人もいないとしていた。しかし専門家の間では、北朝鮮が新型コロナウイルス感染を免れたとは考えにくいとみられていた。韓国では現在、1日当たり40~60人の新規感染者が記録されている。

 KCNAは、感染が疑われる人物は「3年前韓国に行った逃亡者」で、韓国との軍事境界線沿いにある北朝鮮側の都市、開城(ケソン、Kaesong)市で発見されたと伝えた。氏名は公表されていない。

「最初のステップとして厳格な隔離措置を取り、この人物と接触した人全員と、過去5日間に同市に行ったことがある人を徹底的に検査する」とKCNAは伝えている。

 KCNAによると、北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-un)朝鮮労働党委員長は、「致命的かつ破壊的な災厄につながりかねない…危険な状況」に対処するため、25日に政治局の会議を緊急招集。新型コロナウイルスを封じ込めるため「最大非常態勢を取り、最高クラスの警報を出す」ことを決めた。

 金氏は、厳格な予防措置を取っているにもかかわらず「この悪性ウイルスはすでにわが国に入っている恐れがある」と述べ、北朝鮮政府が24日に開城市を完全封鎖したことも明らかにした。

 映像は国営朝鮮中央テレビ(KCTV)の放送内容の一部。(c)AFP