【7月25日 AFP】ペルーで、マルティン・ビスカラ(Martin Vizcarra)大統領を乗せた車を泣きながら追いかけ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかった夫を助けるよう懇願する女性の映像が拡散されている。

 動画が撮影されたのは、南部にある同国第2の都市アレキパ(Arequipa)。3人の子を持つセリア・カピラ(Celia Capira)さん(32)は19日、「大統領、行かないで!」と泣き叫び、夫に病床を与えるよう求めた。

 しかしカピラさんの話は、悲しい結末に終わった。夫アドルフォ・ママーニ(Adolfo Mamani)さん(57)が、21日に亡くなったのだ。患者数に圧倒され病床と人工呼吸器の両方が不足したアレキパの医療システムは、ママーニさんを救うことはできなかった。

 ママーニさんが死亡したオノリオ・デルガド病院(Hospital Reg. Honorio Delgado)前には、病院に入りきらなかった患者のために当局がテントを張っており、ママーニさんも当初そこで治療を受けていた。

 映像には、ビスカラ大統領の車列が走り去る中、「大統領、あなたはテントに行かなければなりません。(患者の)置かれた状況を見るまでは、病院を離れないでください」と泣きながら叫ぶカピラさんの姿が映し出されていた。

 ママーニさんは20日、テントから病床に移されたが、その翌日息を引き取った。

 1、6、14歳の子を持つカピラさんとママーニさんの夫婦は、アレキパで店舗を営んでいた。カピラさんは記者団に対し、「子どもたちをどうすれば良いのか。父親がもうここにはいないということを、どう伝えれば良いのか」と問い掛けた。

 ビスカラ大統領は21日、カピラさんに気付いていなかったとして謝罪。しかし、新型コロナウイルス感染者数が急増するアレキパでは、状況が緩和する兆候は見られない。

 中南米諸国で最も新型コロナウイルスの被害を受けた国の一つに数えられるペルーでは、これまでに37万人以上の感染者と1万7000人を超える死者が出ている。(c)AFP