【7月21日 AFP】国連(UN)は15日、イエメン沖に放置され、腐食が進んでいる石油貯蔵施設について異例の会合を開き、もしも内部の原油110万バレルが紅海(Red Sea)に流出すれば「大惨事」になると懸念を示した。

 イエメン西部ホデイダ(Hodeida)港沖に係留されている浮体式海洋石油貯蔵積出設備「セイファー(Safer)」が建造されたのは45年前。破損すれば、海洋資源や数万人の貧しい漁民にとって壊滅的な結果をもたらす恐れがある。

 国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン(Inger Andersen)事務局長は国連安全保障理事会(UN Security Council)に対し、同施設の「状態は日々劣化しており、原油流出の可能性が高まっている」と説明。「迫り来る環境的、経済的、人道的大惨事を阻止するために協調して動ける時間は残りわずかだ」と訴えた。

 安保理によるとすでに14日、ホデイダを掌握しているイエメンの反政府武装勢力フーシ派(Huthi)に対し、同施設の簡単な修理と次の段取りを見極めるための視察チームを送る計画の詳細を送付したという。

 国連は視察チーム派遣について、12日の時点でフーシ派はおおむね合意していると明かしていた。だがフーシ派は昨年夏にも同様の合意をしていながら、直前になってジブチからの国連視察団の訪問を中止させていた。

 イエメン内戦によって同国北部のほぼ全域をフーシ派が掌握して以降、セイファーは過去5年間、事実上整備なしで放置されている。貯蔵施設には倒壊や爆発の可能性があり、そうした事態が起きれば、周辺地域の生態系の回復に最長30年かかるような惨事になるだろうと専門家らは指摘している。

 同貯蔵施設の問題は、経済や人道支援などイエメンの他の問題と同様、フーシ派側の交渉の切り札になっている。フーシ派は、重油の売却額をめぐる支配権を確保するためにこの危機を利用しているとして非難されている。(c)AFP