【7月12日 AFP】中国で今月、1100万人近くの生徒たちが受験する過酷な大学入学試験が実施された一方、過去に受験者数百人が成り済ましの被害に遭って夢を奪われた実態が明らかになり、ソーシャルメディア上で激しい怒りの声が噴出している。

 中国東部・山東(Shandong)省当局は2年にわたる調査の結果、「高考(Gaokao)」と呼ばれる大学入学試験における受験者の身元盗用に、280人超が巻き込まれていたことが判明したと発表。これを受け、人々の間で激しい抗議の声が上がった。同国の教育省は9日、高考をめぐる不正行為は今後捜査対象とし、不正を行った者は進学先への入学資格を剥奪すると明言している。

「高考」は、農村部で暮らす貧しい生徒が高得点を取れば、将来の展望が劇的に変わる可能性もあるだけに、一般的には学校生活において最も緊張を強いられる場面となっている。

 14億人の人口を抱え、不正が慢性的な問題となっている中国では、狭き門である一流大学への競争が激しく、山東省における今回のスキャンダルの規模に多くの人々が衝撃を受けている。

 身元の盗用は2006年以前に行われたケースが大半で、当局は不正を発見できなかったことについて、当時は身分証明書の確認方法が貧弱なものだったためとしている。

 山東省政府は、これまでに46人が処罰されたと述べたが、詳細は明らかにしていない。

 被害者女性の一人である苟晶(Gou Jing)さんは、中国版ツイッター(Twitter)の「ウェイボー(Weibo、微博)」上で、1997年にかつての担任教師の娘から身元を盗用されたと明かした。

 普段は成績優秀だった苟さんは、試験で不成績となり、結果的に出稼ぎ労働者になった。その一方、担任教師の娘は北京の大学に進学し、教師になったという。

 苟さんは、自身の身元がどのように盗まれたのかはっきりしないものの、試験の得点が他の生徒に振り替えられたか、詐称者の女性が苟さんの氏名を記した偽の身分証明書を使って試験会場に入場したのではないかと推測している。

 山東省政府は、苟さんに成り済ましたこの女性から学位を剥奪し、仕事も首にしたとしている。

 苟さんはメディアの取材に対し、「当時は誰かが高考の得点をいじると疑うほどの知恵も経験もなかった。そんなことができるとすら思わなかった」と説明。

 またウェイボーへの投稿で、2003年に元の担任教師から手書きの謝罪文を受け取り、その後何年もの間、その知らせを受け止めるのに苦しんだと明かした。

 苟さんは「成り済ましは忌まわしいものだ。詐欺のプロセスに関連する違法行為や贈収賄などの罪は、捜査されるべきだ」「一連の過程を粛正しなければ、さらに多くの人々が被害に遭ってしまう」と話している。

 苟さんは今、ネット販売向けの子ども衣料ブランドで働いていると伝えられているが、AFPからのコメントの求めには応じなかった。(c)AFP/Laurie CHEN