【7月12日 AFP】米国内で、政府が世界反ドーピング機関(WADA)への資金拠出を停止するとの見方が強まっている。これを受け、米国反ドーピング機関(USADA)のトラビス・タイガート(Travis Tygart)最高経営責任者(CEO)が11日、以前から求められているWADAの改革を実施するチャンスだと話した。

 米国では、麻薬管理政策局(ONDCP)がWADAへの資金拠出を停止する権限を連邦議会の主要委員会から認められ、年間270万ドル(約2億8900万円)の拠出を止める公算が大きくなっている。

 ONDCPは6月末、WADAがガバナンス改革を実行しなければ、資金提供を停止するよう連邦議会に勧告する衝撃的な調査結果を発表。するとWADAは強い言葉でこの評価を否定し、「不正確な内容や誤った認識、虚偽が複数」含まれると批判していた。

 しかしUSADAのタイガートCEOはAFPに対し、ONDCPの調査報告を「絶対的に正確で、政治色のない現実的な全体像を描いている」と評し、支持する姿勢を示した。

「ONDCPは、WADAが選手に声を上げるよう求め、ガバナンス面からスポーツ団体の影響を排除することで独立し、それによってフェアな代表となることを求めている」「素晴らしいのは、米国が改革に対する真剣さを明確にし、拠出を差し止める権限を議会で得ようとしていることだ。実現すればWADAは壊滅的な影響を受けるだろう」

「そうなることは誰も望んでいない」「しかし、改革の約束は果たされていない。選手も、この件に注目している各国政府もフラストレーションをためている」

 ONDCPのジェームズ・キャロル(James Carroll)局長は6日、WADAのウィトルド・バンカ(Witold Banka)会長に書簡を送って米当局が本気で拠出停止を考えていることを改めて伝え、「私の望みは、それが現実にならず、国際スポーツ大会の品位をともに改善していく道が見つかることだ。それが全選手と参加国のためにもなる」と述べている。

 USADAは以前から、WADAの上層部に対する国際オリンピック委員会(IOC)の影響を批判しており、IOC委員がWADAの要職に多く就いているせいで、独立した行動ができずにいると考えている。(c)AFP/Rob Woollard