【7月9日 AFP】米メジャーリーグサッカー(MLS)は8日、約4か月の中断期間を経て「MLS is Back Tournament」と銘打たれた大会が開幕した。試合前には人種差別に対する重苦しい抗議デモが行われ、新型コロナウイルスに集団感染したチームがさらに不参加を強いられるかもしれないという新たな不安も生じている。

 米フロリダ州のディズニー・ワールド(Disney World)にあるESPNワイド・ワールド・オブ・スポーツ・コンプレックス(ESPN Wide World of Sports Complex)内の観客がいない急造スタジアムで、オーランド・シティSC(Orlando City Soccer Club)は後半アディショナルタイムにナニ(Luis Cunha aka Nani)が決勝ゴールを挙げ、デビッド・ベッカム(David Beckham)氏が所有するインテル・マイアミ(Inter Miami)を2-1で下した。

 後半開始早々にフアン・アグデロ(Juan Agudelo)にゴールを決められたオーランド・シティだったが、70分にクリス・ミュラー(Chris Mueller)が同点弾をマークすると、最後は後半アディショナルタイム7分にナニが得点を挙げ、逆転勝利を収めた。

 しかし、リーグ再開トーナメントの開幕戦でオーランド・シティが挙げた劇的な勝利は、ピッチ外の出来事によってまったく目立たぬものとなった。

 キックオフの直前、MLS全クラブの選手たち数十人がピッチに並び、人種差別や警官の蛮行に対して無言の抗議を行った。

 黒いTシャツと黒い手袋を着用した選手たちは、8分46秒にわたって夜空に向かって拳を突き上げた。これは、非武装の黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)さんが亡くなった米ミネアポリス(Minneapolis)での事件で、フロイドさんが警察に拘束されていた時間と関連している。

 試合開始のホイッスルが鳴ると、オーランド・シティとインテル・マイアミの選手たちは、フロイドさんの死に対する反感が強まる中で世界中に波及した「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」運動への連帯を示すジェスチャーである膝つき抗議を行った。

 こうした重苦しい光景は、選手を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から守るため、ディズニー・ワールド内にある保護された「バブル」内でMLSの25チームが参加するW杯(World Cup)形式の大会の幕開けをかすませた。

 しかし大会がキックオフする中、新型コロナウイルスのクラスター感染が発生したチームが、新たに不参加を強いられることになるかもしれないという不安も生じている。

 検査で5人の選手が陽性反応を示したと7日に明かしたナッシュビルSC(Nashville SC)は、チーム内でさらに4人が感染したと報じられている。

 選手とスタッフの計10人が陽性反応を示したと発表していたFCダラス(FC Dallas)は6日、大会への参加辞退を余儀なくされていた。(c)AFP