【7月9日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)により、基準を満たさないマスクや消毒剤などの医療用品の密売が増加し、人々の命が危険にさらされているとして、国連(UN)が8日、警鐘を鳴らした。

 国連薬物犯罪事務所(UNODC)の報告書によると、新型ウイルスをめぐる恐怖と不確定性につけこみ、複数の犯罪グループが需要の急増による供給とのギャップを満たそうと、粗悪品を提供しているという。

 UNODCのガーダー・ワーリー(Ghada Waly)事務局長は「犯罪者らが人々の不安と、防護用品および医薬品の需要増加につけこんで、新型コロナウイルスの危機を利用しようとしており、人々の健康と生命が危険にさらされている」と指摘。

「国境をまたぐ犯罪グループは、基準未満だったり、偽造されたりした医療用品を密売するため、各国の規制と監督の隙間を利用している」と述べた。

 3月には国際刑事警察機構(インターポール、Interpol)が主導し、90か国が参加して、医薬品と医療用品の違法なオンライン販売を対象とする捜査が実施された。その結果、世界全体で121人が逮捕され、基準未満や偽物のマスク、および1400万ドル(約15億円)相当もの有害な影響を及ぼし得る医薬品が押収された。

 インターポールは、2018年に行われた捜査に比して、未承認抗ウイルス薬の押収量が約18%増加し、一部の国で新型コロナウイルスの治療にも使用された抗マラリア薬「クロロキン」の押収量は100%超も増加したと報告している。

 UNODCは「共通のアプローチのみが効果的な対応を可能にする」と述べ、国際的な協力を増進し、法的な枠組みと罰則を強化し、医薬品業界で働く人々への訓練を増やすことなどを呼びかけた。(c)AFP