バングラデシュの多くの工場では輸出向けの衣服を製造している。この写真は、コロナウィルスに伴うロックダウン中も作業を続ける女性たちを写したものだ。つまり私たちが感染を防ぐために外出自粛をしている一方で、彼女たちは感染の危機にさらされながらも私たちの着る衣服を製造しているのである。このことは先進国と途上国の平等ではない関係を改めて浮き彫りにしたように感じた。先進国は自国だけがこの危機を乗り越えることができればそれでいいのか。長期にわたるコロナウィルスとの闘いが、国家間の格差を助長するものであってはならない。先進国は自国中心的な考え方を改め、不平等な関係によって途上国が抱えるリスクについて今こそ向き合うべきである。
[獨協大学 松尾 結菜]

[講評] 羽場久美子(青山学院大学国際政治経済学部教授)
 バングラデシュ・アスリアの縫製工場で働く女性たち。日本の多くの若者市民たちがStay Homeしている中、あるいは感染解除で夜の街に繰り出し感染を拡大させている中、自宅で休むこともできず働き続けねばならない人たちがいる。先進国でもエッセンシャルワーカーと呼ばれる医療・介護関係者、老人ホーム、ごみ収集、ビル掃除、警察の方々がいる。
 自分のためでなく国家や社会のために「Stay Home」できない人々がいる。そうした人々を見る視点はとても暖かく自省的である。それをやらねば生きていけない現実、それらの上に私たち先進国の生活が成り立っている現実、知らずに私たちも加害者になっている現実を見据えた貴重な1枚である。