【7月2日 AFP】インドとパキスタンが領有権を争うカシミール(Kashmir)地方のインド支配地域で1日、治安部隊が民間人男性を射殺し遺体の上に3歳の孫を座らせて写真撮影をしたとして、葬儀に集まった住民ら数百人が怒りの声を上げた。

 バシル・アフメド・カーン(Bashir Ahmed Khan)さんは、インド政府側部隊と分離独立派の衝突の際に死亡した。治安部隊の報道官によると、衝突が起きたのは北部の町ソポア(Sopore)で、分離独立派がモスクの屋根裏から治安部隊に向けて発砲してきたため戦闘になったという。この衝突では治安部隊員1人も死亡した。

 カーンさんの遺族はAFPに対し、ソポアの住民から聞いた話として、カーンさんは孫と一緒に車で移動中だったが、衝突収束後に治安要員らに車から引きずり出されて射殺されたと語った。その後、治安部隊の制服を着た人物が、路上に横たわったカーンさんの遺体の胸部に孫を座らせ、写真を撮影したという。

 この写真はソーシャルメディア上で広く共有された。

 治安部隊側は、疑惑は「事実無根」だと主張している。インド警察当局も遺族側の主張を否定し、「誤った報道やうわさ」に対して法的措置も辞さない構えを示した。

 インド連邦政府直轄地とされたジャム・カシミール(Jammu and Kashmir)の中心都市スリナガル(Srinagar)近郊で1日に営まれたカーンさんの葬儀には、数百人が参列し、「われわれは自由を求める」とシュプレヒコールを上げてインドの支配に抗議した。

 カシミール地方では、3月に新型コロナウイルス対策として外出・移動制限が課されて以降、インドの治安部隊による分離独立派の鎮圧作戦が激しさを増している。人権団体「ジャム・カシミール市民社会同盟(JKCCS)」によると、今年1月以降にカシミールのインド支配地域では100回を超える軍事作戦で少なくとも229人が死亡した。このうち民間人は32人、インド治安部隊が54人、分離独立派が143人という。(c)AFP